賢治嫌い2 
ヤングの顔
賢治嫌い2 ―ヤングの顔―
相馬杜宇

【登場人物】
清水智弘  警備員(かつての男)
清水元子  智弘の母
小山タカシ フリーター
石田 明  警備員(アクション倶楽部元師範)
室山朱美  ホームレス支援サークル「たまり場」メンバー
吉岡康子  警備員人事課
鶴岡武志  芸能事務所勤務(元Vシネの助監督)



取り立てて物は無く、演者が「海」と言えば海。「山」と言えば山を観客は想像するだろう。だから演じやすいように(想像力をかき立てられるように)シンプルな舞台セットを期待したい。これを舞台美術(セノグラフィー)と呼んでいる。蛇足だが。


―0―

男の声がきこえてくる。

男  (声のみ)あった。「熊。おれはてまえを憎くて殺したのでねえんだぞ。おれも商売ならてめえも射たなけぁならねえ。ほかの罪のねえ仕事していんだが畑はなし木はお上のものにきまったし里へ出ても誰も相手にしねえ。仕方なしに猟師なんぞしるんだ。てめえも熊に生れたが因果ならおれもこんな商売が因果だ。やい。この次には熊なんぞに生れなよ。」聞かせてくれだなぁ。もう迷わない。ご機嫌取るのはサヨナラだ。

男、宮沢賢治グッズ(黒い帽子にフロックコートを着ている)と、アベノマスク、沢山のポリ袋を持って現れる。背中には木刀。
男、位置につき、残飯を漁り始める。
ゴミ清掃員がやってくる。
男、それを見て、

男  こっちゃ来んな! 邪魔だ! あっつさ行ってろ!! (木刀を振り回す)

清掃員がいなくなると、残飯作業を再開。袋の中から菓子パンが出てくる。 
男、臭いを嗅ぐ。問題ないとわかるとムシャムシャと菓子パンを食べる。
ポリ袋に囲まれて男は食べ続ける。
それは『なめとこ山の熊』のラストシーンのようである。……と、その時おなかが痛くなる。あまりの痛さにのたうち回る。痛い。猛烈に。漏らしそう。どうしたらいいの? 
その時、室山朱美登場。

朱美 どうされました?
男  あの……
朱美 痛いの?
男  (頷く)
朱美 わかりました。今救急車を呼びますので!
男  それよりお手洗い……
朱美 はいはい。今案内します……

男、朱美に案内され、退場。暗転。


―1―

新型コロナウィルスが綺麗さっぱりなくなった近未来。20××年。秋。
明るくなると都内のカフェ。鶴岡武志と男(清水智弘)がいる。鶴岡は既に吹き出し笑いをしている。
一応予防のため男はマスクを持っているが外している。鶴岡はしていない。

男  え……?
鶴岡 いや……ヤングの顔かよって。
男  ああ……
鶴岡 ナウヤング大賞って40歳でしょ?
男  自称です。自称40歳。
鶴岡 自称かぁ……(まじまじと男の顔をみる)
男  何ですか?
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