水は皆で分け合え
 水を張った洗面器に紙を浸す実里
 紙に「イ」の文字が浮かぶ

実里「私の家系は古くから水を媒介に占いを行い、人を導いてきた水分りの巫女にルーツがあると知ったのは社会科の授業の時でした。どうやら私にも素質があるみたいです。
   この5Gの時代に非科学的だとは思いますが、他の16歳の子にはない力を持っているというのは誇らしくもあります。ただ、楽しみなばかりではありません。この能力を得た一族の者は多くが16〜7歳の内に亡くなっているのです。例外は私くらいの歳でカンボジアに井戸を掘りに行った菜穂おばさんくらい…いや、話が逸れました。すると、私の寿命はあと1年?暗い気持ちにならないでもないですが、人という者は先の災厄よりも今日の吉兆のほうが気になるものです。私もそう」
  
  新しい紙を用意する

実里「私には気になる人がいます。明日の席替えがどのような結果になるか占ってみて、そしてあわよくば神様に少し手助けしてもらおうと思うのです」

  水に紙を浸す。紙には「小吉」

実里「微妙なとこです。もう一度…」

  紙には「吉」

実里「末吉と吉のどちらが上だったかは定かではありませんが、大して良くないのは確かです。もう一度引き直したいですが、おみくじって引き直していいんでしたっけ?まぁ市販のものと天然ものを比べてもしかたないか…」

  紙には「末吉」

実里「…私、もう少しで誕生日なんです」

  紙には「凶」

実里「下がってない?ダメダメ。小吉くらいにはもどさないと」

  紙には「凶」もう一枚浸すが「凶」

実里「(息が苦しくなってくる)もう一度…もう一回だけ…」

  持っている紙を全て浸すが全部「凶」
  暗転、着水音





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