今日はいずこに?ナキウサギ
劇部一史のラヴストーリー
今日はいずこに?ナキウサギ

二宮弘人

   登場人物 [8人〜12人]
一史(かずし20歳 某大学二年生。劇中劇のナキウサギ役)
ネガ(一史のネガ)
ポジ(一史のポジ)
トウコ(?歳 一史の恋人)
山田耕平(21歳 演劇部部長。劇中劇ではかわいかずお役)
加藤愛(21歳 副部長。あつこ役・父兄役)
重田麻衣(21歳 劇中劇の女子高生役。教務主任役。編集者役)
岩瀬友那(ゆうな20歳 大道具。一史の元カノ・黒井香奈の親友。人妻役)

   一場

○ 劇中劇「ナキウサギ」のセットである、かわいかずおの部屋。正面に押し入れ。手前に書き物机。一史は黒子姿で右手にナキウサギ(ペーパーウェイトに見立てたもの)をはめている。下手側に電話台。時は秋、午後。 

山田(かわいかずお)原稿用紙を手にしている。畳の上のナキウサギを見て、
山田(かわいかずお)M「今日はそこかよ」

山田(かわいかずお)手の原稿用紙ノートを見て、M「何でこんなの買ったんだろう」と言いながら書き物机に置く。

山田(かわいかずお)ナキウサギを拾って、机の上の原稿用紙の上に置く。正面を向いて座り、ナキウサギに、M「大人しく乗ってろよ。そのうち何か書くからな」

山田(かわいかずお)おもむろに立ち上がって奥に行き、押入を開けて下の段から布団を引っ張り出し、セット中央に放り投げる。次にストッキングを一ダース分くらい引っ張り出し、次々に放り投げる。

最後にストッキングを取りだし、投げようと思って止め何度か引っ張って、それから捨てる。バットを取りだして捨て、次にクッキーの箱を取りだし、左側に投げる。

   SE・突然電話が鳴る。

山田(かわいかずお)しばらく電話を眺めて、それから受話器を取り、

山田(かわいかずお)「はい」

山田(かわいかずお)「違います。ペーパーウェイトもバットも持ってません。大賀博士も図書館も知りません」

   SE・電話を切る音。

山田(かわいかずお)押入の前に戻り、中からクッキーの箱をたくさん取りだして放り投げる。押入の空いたスペースをしばらく見つめていたが、唐突に背中から中に入り、客席に向かう形で押入を閉めてしまう。

   SE・電話が鳴る。六回鳴って鳴りやむ。

   SE突然の落雷の大音響。地響き。停電。回復。

山田(かわいかずお)押入を開けて中から這い出して来て、こわごわと辺りを見回す。まだ四つんばいのままM「あ〜、怖かった」

山田(かわいかずお) やっと立ち上がって客席に近づき、カーテンを開けるマイム。光が射して顔をしかめM「変だな。晴れてる」

   ナキウサギはいつのまにかセット中央に転がっていて

一史(ナキウサギ) 「変なのはかわいかずお君」

山田(かわいかずお)「なに?だれ?」

一史(ナキウサギ) 「変なかわいかずお君」

山田(かわいかずお)「誰かいる。……」

山田(かわいかずお)後ずさりしてバットを握り「おい!出てこい」
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