君の顔が、見たくて。
場面   学校の屋上
 
  ※瑞穂がキョロキョロと辺りを見回している。
  ※寝そべっている川瀬に気づく
 
  瑞穂「(地面に膝をつき)…やっぱり、ここにいたんだ。」
  川瀬「…(眠たそうな声)委員長。…珍しいな、君もサボり?」
  瑞穂「そんなわけないでしょ。先生に川瀬くんを探してきてって言われたの。」
  川瀬「じゃあ、どこにもいなかったって言っておいてくれないかな…。」
  瑞穂「そんな嘘、つけないよ。」
  川瀬「(身体を起こしながら)ははっ、そうだよな。委員長は優等生だもん。」
  瑞穂「それって馬鹿にしてる?」
  川瀬「…まさか、褒めてるよ。」
 
  ※学校のチャイムが鳴る
 
  瑞穂「え、やだ…授業始まっちゃった…!早く戻らないと…」
  川瀬「待って。(瑞穂の腕を掴む)」
  瑞穂「ちょっと何すんのっ。」
  川瀬「今行ったところで、途中からでしょ。観念して、一緒にサボろう。」
  瑞穂「………。」
  川瀬「それとも、僕みたいな変なやつと一緒にいられるの見られたら嫌?」
  瑞穂「…川瀬くんは、変な人じゃないでしょ。」
  川瀬「どうして?」
  瑞穂「都会から急にこんな田舎に来たから、馴染めないだけじゃないのかなって。」
  川瀬「…へえ、そう思うんだ。」
  瑞穂「私も、昔、東京に住んでいたから。」
  川瀬「そうなんだ。どこら辺?」
  瑞穂「世田谷。」
  川瀬「僕がいたところより都会だ。」
  瑞穂「親が離婚しちゃって、母の実家があるこっちに引っ越してきたの。」
  川瀬「そっか、大変だったね。」
  瑞穂「だから何となく…、川瀬くんがここに溶け込めないのもわかる気がして。」
  川瀬「それもあるけど、どうせまた違う場所に行かないといけないからね。
     あまり思い出を作りたくないんだ。」
  瑞穂「転勤族?」
  川瀬「ううん、そういうわけじゃないんだけど。」
  瑞穂「そう…。」
  川瀬「だけど、クラスに絵に描いたような真面目な学級委員長がいて驚いたよ。」
  瑞穂「やめてよ。」
  川瀬「委員長が学校案内をしてくれるなんて漫画の中だけだと思ってたし。」
  瑞穂「好きで学級委員やってるんじゃないの。誰もやりたがらないし…。」
  川瀬「え、もしかして、いじめられてる?」
  瑞穂「ううん、大丈夫。たまに上手く行かないことがあるけど。」
  川瀬「ふうん…。何かひどいことをされたら、僕に言いなよ」
  瑞穂「何で、川瀬君に。関係ないでしょ。」
  川瀬「クラスメイトだからだよ。全く関係ないわけじゃない。」
  瑞穂「…意外と正義感強いタイプ?」
  川瀬「どうだろう。まあ、電車でお年寄りに席は譲ることは多いかな。」
  瑞穂「あははっ、何それ。」
  川瀬「……(安心したように)やっと笑った。」
  瑞穂「あ…私、目が悪くて…力が入って、
    すぐ眉間にシワが寄っちゃうから…。」
  川瀬「眼鏡は?」
  瑞穂「かけていたんだけど、度数が合わなくなったの。
     直すの面倒くさくて…そのまま。」
  川瀬「ふうん。実は僕も、あまり目が良くなくてね。」
  瑞穂「え、そうだったの?」
  川瀬「もう何年もぼやけた視界のなかで生きている。
     だからみんなの顔、ちゃんとは見えていない。」
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