そして熊になる
『そして熊になる』
 : 
部長:「・・・今、なんて言った?」
小林:「えと、親がライオンになったので、会社を辞めさせてください。」
部長:「ふむ、なるほど。」
小林:「いいですか?」
部長:「その前にひとつ聞いてもいいか?」
小林:「ダメです。」
部長:「え?」
小林:「ダメです。」
部長:「・・・なんで?」
小林:「え?」
部長:「なんでダメなの?」
小林:「え?だって聞かれたから。」
部長:「え?」
小林:「え?」
部長:「え?なんで?なんで聞いたらダメなの?」
小林:「え?だって聞かれたんですよ?『ひとつ聞いてもいいか?』って。
小林: つまり、選択権を与えられたんですよ?
小林: だったら、その選択権を行使したいじゃないですか。」
部長:「ああ。」
小林:「だから、断りました。」
部長:「なるほど。」
小林:「はい!」
部長:「・・・ひとつ聞くぞ。」
小林:「はい、なんでしょう?」
部長:「ライオンになったの?」
小林:「はい。ライオンになりました。」
部長:「え?どうやって?」
小林:「どうやって?」
部長:「どうやって。」
小林:「・・・水は、温めると水蒸気になりますよね?」
部長:「なるね。」
小林:「そんな感じです。」
部長:「え?」
小林:「はい?」
部長:「温めたら、ライオンになったの?」
小林:「なるわけ無いじゃないですか、水蒸気じゃあるまいし。」
部長:「だよね?」
小林:「当たり前ですよ。」
部長:「じゃあ、さっきの説明なんなんだよ。」
小林:「たとえ話ですよ。」
部長:「だから、どうやって・・・、はあ、もういいわ。
部長: とりあえず、ご両親がライオンになったのね?」
小林:「あ、ライオンは父です。母はオットセイです。」
部長:「オットセイ?」
小林:「はい。オットセイです。」
部長:「・・・なんでお母さんのことは言わなかったの?」
小林:「まあ、オットセイなんで、言わなくてもいいかなと。」
部長:「ライオンもオットセイも変わらなくない?大変なことよ?」
小林:「でも、ライオンがその辺歩いてたら大変な事件ですけど、
小林: オットセイがその辺歩いてても、可愛らしいニュースじゃありません?」
部長:「ま、まあ、確かに・・・。」
小林:「なので、伝えるべきはライオンになった父のことかなと。」
部長:「なるほど。で、なんでお父さんはライオンになっちゃったんだろうね?」
小林:「やっぱり、たてがみがカッコいいからじゃないですか?」
部長:「え?」
小林:「カッコよくないですか?ライオン。百獣の王とか言われてますし。」
部長:「あの、お父さんは自分からライオンになったの?」
小林:「知りません。」
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