そもそもの話




『そもそもの話』
相馬杜宇
















【登場人物】
田中
中田



2018年。ある秋の日の午後。
とある喫茶店。
田中と中田がおり、コーヒーを飲んでいる。田中の手元には角型A4判のクラフト封筒。かなり厚みがある。
田中は見た目は普通だが実は左の片麻痺で、下肢装具を着けており、左手はだらんと垂れ下がり、日常生活動作の役には立っていない。
二人は共にさほど高いブランド品ではないものの、親の監視下でさり気ないセンスを感じる服装。(中田の方が高い服装)
しかし服装を気にする素振りは見当たらない。
田中、極めて軽い調子で口を開く。

田中 中田ぁ?
中田 どうした、田中。
田中 いやー、ね。
中田 何だよ。
田中 そもそもの話だけどさ。
中田 そもそも?
田中 (言い掛けるものの)とりあえず、サークルの話でもしようか。
中田 サークル?
田中 うん。演劇サークル。新人公演の話。
中田 あったね。懐かしいわ。
田中 誰だっけ? 先輩がズカズカ稽古にやってきて、「この中に役者はいない。肩から上で演技してる」って。
中田 無茶振り過ぎる。
田中 今にして思えばよ? そりゃ役者は身体鍛えた方が良いに決まってんじゃん。俳優は身体が資本だし。
中田 確かに。
田中 ただ自分は作家志望だったんで、ガッツリ走り込むのもどうかなーと思って。身体訓練が無いサークルを選んだ訳だけど。
中田 あれ? 情報入ってる? 田中が作家志望って。
田中 いや、ていうか。もう少し言い方あるんじゃないの? って思ったわけ。仕方ないじゃん。作家志望だって何だって。新人は全員役者やる事になってんだから。ルールだし。何で役者が居ないと否定すんのかなぁって。別にプロ目指してる訳でも無いのに。
中田 確かに。演劇やってる奴ゼロだわ。
田中 そういや爆笑だったね。企画公演。
中田 爆笑って、コント?
田中 そうそう。詳細覚えて無いけど。どっかん笑い取ってて。
中田 笑ってたよ、先輩。
田中 先輩も?
中田 あの大きな髭生やした。
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