東洲斎写楽
東洲斎写楽

大地:QUEST歴史調査員、探索(リサーチ)担当。
黒瀬:QUEST歴史調査員、援護(サポート)担当。黒縁眼鏡を掛けている歴女。
さよ:新吉原の遊郭を足抜けした元遊女。生まれつきのヘテロクロミアであり、花の飾りが付いた簪を2本挿している。感情を表出しない。
斎藤十郎兵衛:阿波徳島藩お抱えの能役者。舞台稽古中に負った怪我の影響で右足を引き摺って歩いている。
涼風:新吉原遊郭の下級遊女。花の飾りが付いた簪を1本挿している。
蔦屋重三郎(影法師):八丁堀に店を構える版元。
ナレーター(本物の蔦屋):左手背に大きな痣がある。
その他エキストラ多数

<オープニング>
舞台上には写楽代表作「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」が置かれており、そこにスポットが当たる。ナレーター登場。

ナレーター:江戸時代の化政文化を代表する浮世絵師の1人、東洲斎写楽。役者や美女の顔を誇張して大きく描写する写楽の絵は、江戸の芸術界を瞬く間に席巻し、後世の芸術家達に多くの影響を与える事となる。1794年に彗星の如く現れた写楽は、僅か10ヶ月という短い期間に140点にも及ぶ浮世絵を世に送り出すと、画業を絶ち忽然と姿を消した。そしてその素性は200年以上経った今も、「東洲斎写楽」という名前以外は明らかになっていない。謎に包まれた天才絵師が生み出したその浮世絵は、躍動感と高揚感に溢れ、時代を越えて尚、観る者の心を惹き付けて止まない。

ナレーター、退場。暫く浮世絵をスポットで映し、暗転。

<1場>寛政5年/江戸・八丁堀
明転。町民が行き交う賑やかな江戸の町中のSEが入る。

ナレーター、登場。

ナレーター:1793年、江戸・八丁堀。

ナレーター、退場。

大地、登場。巾着袋と和傘を手に持ちながら舞台中央まで歩いて来る。SEは徐々に音量が下がる。男性、登場。

男性:大地!

大地:どうしたんですか、こんな所で。奥さんの側に居てあげた方が良いんじゃないですか?

男性:お前に是が非でも礼を伝えたかった。昨夜は気付かぬ内に姿を晦ましおって。

大地:産婆さんを送らなきゃならなかったから。それに声掛けられる様な雰囲気じゃなかったし。

男性:誠に、かたじけない。(頭を深々と下げる)

大地:ほら、顔上げて。

男性:あの子が五体満足で産まれたのは、お前のお陰だ。

町の雑踏のSEオフ。舞台全体が薄暗くなり、前夜の回想シーン。舞台右側の納屋に天井から長い縄が垂れ下がっており、浴衣姿の女性が客席を背にして舞台上に座り縄にしがみつき苦しそうに呼吸をしている(女性はこの場で客席に顔は一切見せない)先程の男性と数人の女中が座り込んでいる女性を取り囲んでいる。

男性:(女性に)おい、大事無いか!気をしっかりと持て!

女中:旦那様、外にてお待ちを!予てより申し上げておりますが、此処に殿方は立ち入る事は出来ませぬ!どうか私共にお任せを!

男性:何を申すか!貴様らの中に赤子を取り上げた経験のある者は居らぬだろうが!

女性:貴方…私は平気さ、心配要らないよ。

男性:案ずるな、俺が傍らで寄り添ってやる!これより先、何があろうともだ!

女性:ふふ、洒落臭いね…

女中:さあ、御主人様、お出になって下さい!

男性、女中達に舞台左側(納屋の外)に追いやられ、そわそわしている。
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