CELL
聖霊高校演劇部作
CELL
○登場人物(女7)
ユカ 主人公。高校生。
サキ ユカのクラスメイト
ユキ ユカのクラスメイト
マキ ユカのクラスメイト 
ハハ   ユカの母親。割烹着姿。いつも後ろを向いて料理をしている。最後の場面で前を向くと、顔には口裂け女の口が描かれたマスクをしている。
センセイ  ユカのクラスのセンセイ。
太鼓叩き  小学生の服装でランドセルを背負う。小面の能面を被りハイヒールをはく。

○あらすじ
ユカは部屋では透明のシートに囲まれて生きている。そこが、ユカが自分でいられる場所である。ユカはその中で本を読む。外に出る時、ユカは必ずマスクをつける。細胞壁がない場所で、細胞である細胞基質が外に漏れて自分がなくなってしまうことを防ぐためである。同じような理由か、学校の友人も皆マスクをしている。学校にいる時、自分は細胞のように振る舞う。皆の和を乱さないよう、自分の立ち位置を見極めて、目立たないよう生きている。そうやって生きる自分たちは、一人一人がまるで見分けがつかない。家に帰ると、母はいつも背中を向けて台所で料理を作っている。「今日は○○よ」といういつもの会話を終えて部屋に戻った時、ユカは細胞からユカになる。細胞が細胞たる自分に疑問を持つことは、不幸でしかない。そんなユカの周りで、世界はいよいよユカを細胞化しようとしていく。体は、細胞が「自分」であること、一人であることを許さない。自分の役割を外れた細胞は、アポトーシスによって消滅する運命にある。

○舞台配置
舞台中央にアクリル板で囲まれた小部屋。下手側奥に母。上手側奥に太鼓が置かれる。舞台上には広く間隔をとって4つの白い箱が置かれ、教室の場面で椅子として使われる。背景は大黒幕。アクリル板の小部屋の真横に上手側青、下手側赤のSS。

( )内の台詞は全て事前に録音したものを再生し、キャストが動きを合わせる。
「 」内の台詞はピンマイクで音を拾い舞台上のスピーカーから音を出す。


Funeral March of Queen Maryと共に幕が上がる。ユカが教科書を手に正面を向いて舞台中央に立っている。ユカに単サス。

ユカ   (生物の体は一つないし複数の細胞から構成される。細胞は外部の環境を隔離す  る膜構造に囲まれ、内部に自己再生のための遺伝情報とその発現機構を持つ一つの生命体である。細胞分裂静止期に核膜に包まれた核を持つ細胞を真核細胞、持たないものを原核細胞と呼ぶ。遺伝情報の実態はデオキシリボ核酸であり、デオキシリボ核酸は原核細胞にあっては細胞質中に存在するが、真核細胞では核膜に覆われた核構造内でヌクレオソーム構造を形成する。真核細胞の細胞質内にはATPを供給するミトコンドリア、タンパク質を合成するリボソーム、分泌顆粒を形成するゴルジ体、不要物を分解するリソソーム、ペルオキシームなどの細胞小器官が混在する。細胞の形態は細胞骨格と呼ばれるたんぱく質集合体によって保持されている。)

    チャイムがなる。照明が舞台手前側を広く照らす。生徒たちが横に広がって等   間隔に座り、その中にユカの席もある。後ろにセンセイがいる。

センセイ  (ユカさんありがとう。じゃあ、時間だから終わりますね。あいさつをお願い。)
サキ   (起立。ありがとうございました。)
生徒たち  (ありがとうございました。)

    生徒たち一斉に礼をする。センセイは去る。

ユキ   (あー、やっと授業終わった。)
マキ   (ユキどうせ寝てたじゃん。)
ユキ   (だって、授業つまんないし、何言ってるかわかんないから。)
マキ   (それよりこの後みんなで遊びに行かない?)
ユキ   (いいね!行く行く!)
サキ   (ねえ、ユカもどう?)
ユカ   (え…。あ、ゴメン。私今日早く帰ってくるようにママに言われてるんだ。)
サキ   (そっか。じゃあまた今度一緒に行こうね。)
ユカ   (うん!ありがと。)
マキ   (で、何しよっか?)
サキ   (うーん、マキは?)
マキ   (実はさ、ユキと近いうちカラオケ行きたいって言ってたんだよね。)
サキ   (ホント?実は私も行きたかったんだ。)
マキ   (じゃあ、決まりだね。やっぱり私たち気が合うね。)
ユカ   (ホント、みんな仲良いよね。)
サキ   (まあね。今日はしょうがないけど、ユカも今度必ず一緒に行こうね。)
ユカ   (ウン。)

太鼓の音が一回なる。全員動きが一瞬止まり、その後ユカ以外の4人は黙って整然と上手にはける。照明が変化し、ブルーの地明かりで舞台中央が奥まで照らされる。下手奥、単サスの明りの中でハハが客席に背を向けて立ち、包丁で何かを切っている、手前側にユカの部屋がある。

ユカ   (ただいま。)
母    (おかえりなさい。今夜はカレーライスよ。)
ユカ   (やったー。ありがとう。)

    ユカは自分の部屋の戸を開ける仕草。中央のアクリル板の小部屋に入る。
    ユカはマスクを外し、教室の場面で持っていた教科書を取り出す。

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