原稿はどこだ

 原稿はどこだ

                作 新堀浩司

人物

安達   漫画家
梶原   そのアシスタント
板垣   編集者


      舞台は漫画家、安達の仕事場。安達と梶原が登場。

梶原  「じゃあ次の原稿は水曜日から取り掛かるのでいいんですね?」
安達  「うん。それまではゆっくりしてて。ごめんね。ここ数日無理させちゃって」
梶原  「いえ。無事に今日原稿を渡すことができて良かったです」
安達  「板垣さん驚いてたね」
梶原  「そりゃそうでしょう。いつも〆切ギリギリの先生が、3日も早く原稿を仕上げたんですから」
安達  「やればできるもんだね。すっごい疲れたけど」
梶原  「ゆっくりお休みに・・・は、なれないんですよね」
安達  「そうなんだよねえ。忙しくてまいっちゃうよ」
梶原  「頑張ってくださいね」
安達  「やだなあ、頑張るとかそういうんじゃないから。まあとにかく、お疲れ様でした。水曜からまたよろしくね」
梶原  「こちらこそ」
安達  「・・・あのさ。大丈夫だったよね?」
梶原  「よくまとまってたと思いますよ」
安達  「そうだよね」

     安達、去る。梶原、スマホを見る。履歴があることに気づき、掛けなおす。

梶原  「ごめん、電話くれた?え。今夜?いいよ。仕事も落ち着いたし。うん。じゃあ、いつものとこでね」

     梶原、電話を切る。時計を見る。

梶原  「帰って、少し寝るか」

     そこに板垣が登場。

板垣  「梶山さん」
梶原  「あれ、板垣さん。どうしたんです?忘れ物ですか?」
板垣  「いや、あの、そういうわけではないんですが・・・」
梶原  「先生、呼んできますか?」
板垣  「いや、それはちょっと待ってください」
梶原  「え?」
板垣  「・・・」
梶原  「何かあったんですか?」
板垣  「あ、いえその。なんと申しましょうか」
梶原  「・・・板垣さん。自首するなら早いほうがいいですよ」
板垣  「ちょ、ちょっと待ってください。何ですか?自首って!」
梶原  「犯罪に手を染めたんじゃないんですか?」
板垣  「違いますよ。私は法に触れるようなことは一切していません!」
梶原  「ということは、法に触れないことで何かやらかしたんですね?」
板垣  「あ、ええと」
梶原  「・・・板垣さん、封筒は?」
板垣  「え」
梶原  「原稿を入れた封筒。お渡ししましたよね」
板垣  「・・・」
梶原  「まさか」
板垣  「すいません!なくしました!」
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