承応二年のドラゴン殺し
玉川水神社縁起異伝(たまがわすいじんじゃえんぎいでん)
承応二年のドラゴン殺し ―玉川水神社縁起異伝―
 (舞台バージョン)井戸乃くらぽー
 
 【登場人物】
 
 エゼル
 喜助
 禅福寺和尚(文福)

 安松金右衛門
 
 水道奉行
 庄右衛門
 清右衛門
 
 みお
 
 ミクマリの神/N
 
 
 
 【プロローグ】
 
 N    玉川上水といえば、太宰治の入水事件で知る人も多いだろう。現在も羽村市から
 四谷までの43kmを流れている小川だが、かつては江戸市中へ飲料水を供給する
 大事なライフラインでもあり、「人食い川」とも呼ばれる激しい流れだったことは
 意外と知られていない。
     上水の歴史については、寛政三(1791)年に江戸幕府普請奉行上水方の記録として
 『上水記』や享和三(1803)年に提出された報告書である『玉川上水上水起元』が
 残されているが、どれも開削当時の1653年からはだいぶ年月が経ちすぎている。
     しかし、数年前、取水口である羽村市とは離れた埼玉県川越市の旧家から、古文書
 が発見された。さして大きなニュースにはならなかったが、鑑定の結果、玉川上水
 開削工事があった年代により近いものと推定されたのである。
  古文書の名は『玉川水神社縁起』、羽村(はねむら)の取水口側に建てられた神社
 の由来である。
 
 
 
 第1幕  1.
 
     傷つきながら剣を持って大きな影に立ち向かっているエゼル。
 
 エゼル    奴は、相当傷ついていた。もしかしたら重傷だったかもしれない。
 だが同じくらい、俺も傷ついていた。
 俺の仲間には傷を癒せる力を持つ者がいて、だが奴にはいない。
 ただ、あと一回の攻撃で奴が俺たちの命を奪えることを知っていた。
 そうだとしてもまた別の者がやってくる。どれだけの年月、俺たちは
 こんなことを繰り返したことか。
 
 何度でも、お前を倒すためこの戦いを続けてやる。
 いや、今目の前にいる奴。お前のことを、俺が殺してやる。
 お前の目は、なんだ? どうしてそんな目をしている。
 
 奴を滅ぼすための呪文が聞こえる。俺たちの最後の戦いが始まったのだ。
       もう二度と、あいまみえることないために。
 
 エゼルが剣を振り上げた途端、辺りが眩しくなり、一瞬ののち暗転。
 
 
 
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