星の王子様
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作 聖霊高校演劇部訳 脚色
星の王子様

〇登場人物

王子様
きつね
バラ

点灯夫
王様
見栄っ張り
酔っ払い
ビジネスマン
学者



〇舞台配置
舞台中央奥と、上手下手やや手前に壇があり、星や井戸など様々なものに見立てる。
上手側に飛行機。一部が袖幕から見えている形で置かれている。
上手側手前か、あれば花道に、机が置かれている。
可能なら星球等で背景を星空にする。

〇その他
・翻訳底本 Antoine de Saint-Exupe(eにアクサン)ry 1943 Le Petit Prince 
・日本における原典の著作権保護は2005年に消滅。
・翻訳及び脚色にあたり、60分程度の演劇作品として成立するようセリフ等一部を原作より変更しました。
・タイトルLe Petit Princeは直訳すれば「小さな王子様」となりますが、内藤濯氏訳の岩波書店版のタイトルである『星の王子様』が一般に広く浸透しているため、それを使用させていただきました。


オープニング
僕は机に向かって本を書いている。単サス。客席を見て。

僕    子どものころ、僕は本を読んでいて、ジャングルの蛇が動物を丸のみにする絵を見たことがあります。それはボアっていう蛇で、動物をかまないで丸のみにすると、6か月も動かないで消化するそうなんです。それを読んだ僕は、ジャングルのことをいろいろ空想して、色鉛筆で絵をかいてみました。その絵は、象を飲み込んだボアの絵で、僕はそれを自信満々に大人に見せたんです。「これ、怖くない?」って。そしたらみんな、「なんで帽子が怖いの?」って言ってくるんですよ。仕方ないから今度はその中身の絵を描いて大人たちに説明してあげました。大人はなんでも説明しないとわからないですからね。でも、そしたら今度は、そんなことしてないで勉強しろって言われちゃいましたよ。だから僕は画家になるのはすっかりあきらめて、いろいろ勉強してパイロットになりました。でも、立派な大人たちとはやっぱりうまくやれないままでした。僕はいつも、初めて会った人に子供のころ書いた蛇の絵を見せるんです。でも返事は決まって「ああ、帽子ですね。」そう言われたら僕はもうジャングルや星の話はしません。代わりに、ゴルフとか、政治とか、ネクタイの話をするようにしてます。そうすると、みんな喜びますし。そんなだから、なかなか友達もできないままでした。6年前、僕の乗った飛行機が故障して砂漠に不時着したあの日まで・・・。

1場 故障
砂漠。夜。星空。上手側に飛行機。翼の一部が破れ、エンジンのカバーが開いている。できれば煙などが出ているといい。「僕」は工具を手に、エンジンと格闘している。

僕    クソ、だめだ!

    僕は工具を投げ出し操縦席の無線を操作する。

僕    ・・・無線もダメか。参ったな・・・よりにもよって、こんな砂漠のど真ん中で・・・。

僕は地面に降りて頭をかきむしる。

僕    明日にするか・・・。

僕はポケットから手帳を取り出す。メモをしながら。

僕    サハラ砂漠上空を飛行中、エンジンの故障で不時着。明日より修復を試みる。周辺に人家なし。飲料水8日分。

    僕はメモをしまいため息をついて、仰向けに寝る。

僕    星か・・・。

照明が少し暗くなる。僕は寝る。少しして、照明がもとに戻る。枕元に、砂漠に似つかわしくない服装の子どもが立っている。

王子様   ねえ。羊を描いてよ。
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