あらすじ
数年振りに訪れた見慣れた教室に見慣れた先生の姿はどこにもなかった。
いたのは掃除もされていない埃の積もった床にうずくまる小柄な女の子。
制服ぐらいしか認識する術がない、それぐらい何も持ってなさそうな女の子。
いや、これは誤りだ。……手にカッターを持っている。それを自分の腕に押し当てて、
「ちょ、っと!」
思わず声をあげた。おそらく、そう、反射的。
駆け寄る、腕を掴む、カッターを取り上げる。ただ、それだけ。ほんの数秒。
少しだけ息を荒げ、さてどうしようかと考える。
このうずくまる女の子の瞳は、あぁ……とても綺麗で、なぜか懐かしい気分になった。
登場人物
永井哀(ながいあい):教育実習生
河合藍(かわいあい):高校二年生
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