君が夏に沈む
君が夏に沈む


ユウヒ
ナギ


さよならが言えない彼らの話。





夏の海。日暮れが近い。
浅瀬に立つユウヒが沈む太陽を眺めている。
ひとつ、水を蹴り上げて。

そこにナギがやってくる。

ナギ   ユウヒ

ナギの声は聞こえているが、無視するように。振り返ることなく。

ナギ   そろそろ行くぞ
ユウヒ   あ、でっかい貝殻見っけ!

ナギ、ため息。

ユウヒ   見てよ、ナギ!
ナギ   …なあ、ユウヒ
ユウヒ   あ、あっちに魚いる!

バシャバシャと追いかけていく。

ナギ   いたか?
ユウヒ   どっか行っちゃった
ナギ   だろうな。あんだけ必死に追いかけたらな
ユウヒ   ナギも来いよ
ナギ   行かねえよ
ユウヒ   なんで
ナギ   だって、死んでるだろ

また無視するように。

ユウヒ   なあ、ここの水、本当に透明だよ
ナギ   無視すんな
ユウヒ   なあ、こっち来てよ
ナギ   行かないよ
ユウヒ   まだいいだろ
ナギ   もう行かなきゃ
ユウヒ   まだ行くなよ
ナギ   ダメだよ

黙り込むユウヒ。

ナギ   だから、ちゃんと話を…
ユウヒ   あ!魚!あっちにいた!

さらに遠くへ走っていく。

1/4

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム