世界は音と光でできている

作:足?著B也(修練)


【登場人物】

田村 康太

鴨  時雨



    散らかった演劇部室。ブルーの照明。田村が入ってくる。サスが当たる。

田村   …なぁみんな、高校演劇って知ってるか?そこは、高校生が作り出す別世界だ。役者も、スタッフも、ときには脚本だって、高校生が作ってる。人間として、まだまだ未熟で、粗削りな俺たちが、必死に観客に訴えかける。舞台の中で、別の人間として命を燃やして生きる。
    それが、俺の思う高校演劇だ。…俺の名前は、田村康太。苗字が田村で、名前が康太。この演劇部の、たった一人の部員。ここは演劇部の部室。一人だと、やけに広く感じる。この舞台とか、無駄に設備が整ってるくせに、俺しかいなけりゃ宝の持ち腐れだな。…なんて、そんな自虐ももう言えなくなる。
    …今日は、卒業の日、ここに来る、最後の日。俺は、この部室の片付けをしなきゃならない。もうこの部室は、演劇部のものじゃなくなるから。1人しかいない演劇部は、俺の卒業とともに、廃部となる。
田村   っていう!雰囲気で始まったりするよねー!プロローグ的な?なんかシリアスな雰囲気で入ってきてここから日常のシーンに移るんでしょ?はいはいよくあるよくある。定番だねー。今のセリフ良くない!?俺の自己紹介と今の状況を一気に説明できちゃう!しかも日常シーンじゃないから説明セリフも違和感じゃない!いいねいいねー!
    覚えました?田村康太ですよ!ここは演劇部室で、部員は俺だけです!…え?じゃあどうやって公演をするんだって?そりゃあ全部俺がやってますよ。脚本も役者も。他のスタッフもね。何とかするしかないんですよ。あ、でも音響と照明だけは別ですよ。うちのやつはちょっと特別なんです。
    さてさて!プロローグが終われば次は日常のシーンです!照明フェードアウト!

    フェードアウトで暗転。暗転のまま

田村   はい、音響入って―!

    日常の曲が流れ始める。まだ暗転のまま

田村   そうそうこんな感じでね!曲が演技の手助けを…って、ちょっと音大きいんじゃない?下げてー!
音響   下げる
田村   そうそう。このくらいがちょうどいいんだよ。音が大きすぎるとセリフが聞こえないからねー。…てか、照明いつまで暗いまま?はやくつけてー。
照明   自明かり
田村   明るくなった―。暗転中にしゃべるっていう演出ってあんまりやらないよね。俺はいいと思うんだけどなー。…で、明るくなったということは、今から日常シーンが始まるってことだ。とてもよくある、日常シーン。
田村   わー大変遅刻遅刻ぅー。
田村   はー学校だりー
田村   きゃっ
田村   うわっ
田村   いてて…なにすんのよー
田村   そっちこそ…ってあれ?なんで俺が目の前に?
田村   おいおい、なんで私が目の前にいるの!?
田村   もしかして
田村   私たち
田村   入れ替わってる!?
音響   前前前世
照明   キラキラした照明

    一人でやってると。鴨が入ってくる。鴨が入ってきた途端、音照が消える

鴨    なにしてんの?
田村   お、物語に刺激を与える部外者の登場だ
鴨    何ふざけてんの
田村   ふざけてなんかないぜ。
鴨    ふざけてるでしょうが。あんたが部室の片付け終わってないっていうから来てやったのに。最終下校まであと1時間もないよ?それまでにここ掃除しなきゃいけないんでしょ?
田村   お、今のは説明台詞だな?もうちょっと自然にした方が良いんじゃないか?
鴨    うるさいなぁ。別にいいでしょうが。
田村   よくないぞ。説明台詞ってのは、それだけで客の意識を止めちまう。物語に入り込んでほしかったら、説明台詞は減らしていかなきゃ。
鴨    誰目線の話
田村   舞台に出る者として
鴨    今関係ないでしょ
田村   確かにそうだな
鴨    もう、ほら、戻ってきて!
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