盲目
「盲目」

真人:愛理を助けた直樹の弟。
愛梨:自殺しようとした高校生。
美幸:愛梨の母親。
裕子:直樹、真人の母親。
医者:医者。

[病院の待合室]
 顔にガーゼと腕に包帯を巻いた愛梨が長椅子に座っている。
 少し離れたところで真人が裕子と電話している。

真人:(電話)うん、そう。手術さっき始まった。うん、詳しくは来た時に話すよ。
   うん、もう暗いから来るとき気を付けて。じゃあ後で。

 電話を切り、長椅子に座る真人。しばらく間が空く。

真人:あの、ケガはもう大丈夫、ですか?
愛梨:...。

 うなずく愛梨

真人:そっか。よかった。

 しばらく間

真人:あのさ、聞いていいか分からないけど、どうして突然道路に飛び出したの?
愛梨:...。
真人:いや、答えたくなかったら答えなくていいんだけど。
愛梨:...。
真人:兄さんが気づかなかったら、大変なことになってたと思うよ。
愛梨:...。
真人:なにか、急いでいたとか?
愛梨:...。
真人:あー、ちょっと疲れててぼーっとしてたとか?たまにはあるよね、そんなときも―。
愛梨:死のうと思ったんです。ただそれだけ。
真人:...そっか。

 しばらく間

真人:たぶん、うちの親が来たらいろいろ聞いてくると思うけど、気にしなくていいから。
愛梨:...。
真人:誰にだって事情があるから。そう、みんなそうだよ。
愛梨:...。

 少し間が空いてから、裕子が急いで来る。

裕子:真人!直樹は!?直樹は大丈夫なの!?
真人:大丈夫だから落ち着いて。命に別状はないって先生も言ってたから。
裕子:そう...、あぁ、よかった...。
真人:とりあえず座りなよ。

 椅子に座る裕子と真人。

真人:車じゃなかったの?父さんは?
裕子:まだ会社よ。後から来るって。それより詳しく教えてよ。なにがあったの?
真人:兄さんが車に撥ねられた。
裕子:それは分かってるわよ!どうして撥ねられたの?車が突っ込んできたの?
真人:違う。
裕子:まさか自分から飛び出したの?
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