ベン・E・キングによろしく
ベン・E・キングによろしく


    家の中、母(妊婦)がラジオを聴いている。ラジオDJの声が響く。そこに父がやってくる

DJ   さぁみんな、今宵はいかがお過ごしかい?夜も更けてきたところで、今日はもうお別れの時間だ。最後はもちろん、この曲を聞いて   お別れしよう。1961年の発売以来、多くのミュージシャンにカバーされたこの曲、ベン・E・キングで「スタンド・バイ・ミー」

    スタンド・バイ・ミーが流れ始める。父が入ってくる。

父    調子はどうだい?
母    あなた。…元気よ。さっきも何回かお腹をけられたわ。
父    わんぱくだなー
母    ほんと、誰に似たのかしら
父    君じゃないのか
母    あら、あなたじゃないの?
父    僕かい?
母    …私かも
父    何だいそりゃ
母    女の子だから、おしとやかに育ってほしいわね
父    はは。そうだね。元気に生まれてくるんだぞー。
母    でも元気すぎてもダメよー
二人   ははは

    スタンド・バイ・ミーがサビに差し掛かったところで、母が歌いだし、続くように父も歌いだす。サビが終わると話し出す。

父    君は本当にこの曲が好きだね
母    ええ。…この子にも、好きになってもらいたいな。
父    そうだね。いつかは、家族全員で歌いたいね。
母    ふふ。素敵ね。

    スタンド・バイ・ミーが流れたまま暗転。花が中央にあらわれ、サスに当たる

花    When the night has come And the land is dark And the moon is the only light we see…(歌ではなく、語るように)

    場転。教室。昼休み、花、実由、香澄がご飯を食べている。

実由   はなーご飯食べよー!
花    あ、うん。
香澄   花、どうしたの?なんかしんどそうだけど
実由   さっきの授業中寝てたから、まだ目が覚めてないんじゃない?
香澄   そりゃあんただ。
実由   何故ばれた
香澄   教えてやろうか、それは私があんたの隣の席だからだ。
実由   え!?ストーカー!?
香澄   私の意志であんたの隣にいるんじゃない。
実由   なぬ!?
香澄   不可抗力!
実由   チャーハン定食?
香澄   難聴か。
花    ふふっ
香澄   ほら、花も呆れてるよ。
実由   えーはなー!
花    いやぁ。実由ってバカだねぇ
実由   わお直球
香澄   さ、花、馬鹿、ご飯食べよ。
花    うん。
実由   馬鹿が私の固有名詞に…
香・花   いただきまーす
実由   あー無視なのね
香澄   ほら、実由…間違えた馬鹿、はやくたべよ
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