タナトピア(20分版)
『タナトピア』

【配役】4人(男1、女3)
1.男 :名前はケイ。20代後半。物腰が柔らかく控えめな性格。
2.女 :名前はユウ。男の妻の妹(男の義妹)
3.老婆:アイという名前の赤ん坊を大切にしている。
     (赤ん坊は人形。顔の一部が怪我で崩れている)
4.妻 :名前はミナ。男の妻。死体なので一言も喋らない。

【上演時間】:20分

【あらすじ】
青い霧に包まれた村タナトピア。
その霧の中にいる限り、死体は決して腐ることがない。
朽ちることも、崩れ落ちることも、決して……

愛する人と過ごす、幸せな日々。穏やかな狂気に包まれた村。
その平和な日常は、一人の来訪者によって崩れゆく。

「姉さんの死体を返してください」

正常と異常。理性と狂気。生者と死体。全ての境界は霧に包まれ曖昧に溶ける。

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【開幕】
(舞台は男の自宅の一室。小さな家の質素な部屋。中央に食卓。その上にオルゴール)
(上手側に玄関ドアがあり、外とつながっている)
(家のある村は青い霧に包まれている)

(男が鼻歌まじりに下手から入場。食事の乗った皿を食卓へ並べていく)

男 「(下手袖に向かって)ミナ。おはよう。目が覚めた?」
   
男 「ちょうど朝ごはんもできたところだよ。さぁ、一緒に食べよう」

(男、下手から、妻を車椅子に乗せて運んでくる。妻はピクリとも動かない)
(男は車椅子を食卓につけ、自分も妻の対面に座る)
(食卓のうえのオルゴールを開ける。おだやかな曲が流れる)

男 「いただきます」
   (男、食事をとる。妻はピクリとも動かない)
男 「今日のはどうかな? ……え? そう?
   うーん、ミナが教えてくれた通りに作ったんだけど……何が違うんだろう?
   え? …………えー、そんなことないよ。だって、それは材料の、」
   
(妻の上半身がダランと横にたれる。
 男、しばらく言葉を止めてから、オルゴールを閉じる)
   
男 「……まだ眠かった? しょうがないな。もうしばらく休むといいよ」

(男、妻の姿勢をなおし、いたわるようにそばにつく)
   
(女、旅行鞄を手にキョロキョロしながらツラ側上手より入場)
(ツラは家の外という設定)
(老婆、反対側よりベビーカーを押しながら入場。女と出会う)

女 「あ、あの、すいません。ちょっとお聞きしたいんですけど」
老婆「はいはい、なんですか?」
女 「ケイっていう男性の家を知りませんか?
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