寸前家族 60分バージョン
「寸前家族」 60分バージョン
                 八城 悠
登場人物
    ・父   ・男1
    ・母   ・男2
    ・娘   ・女
    ・警官  ・強盗1
         ・強盗2

第一章 「邂逅」

          幕が上がると、そこにはリビングの見渡せる家がある。
          ソファーやテーブル、サイドボードといった一般的な調度品。
          舞台下手には玄関と通路、上手にはキッチンやトイレへと続く
          通路、リビング奥には階段等に続くドアが接続している。
          男2、周囲を窺いながら玄関のチャイムを鳴らす。
          応答がないのを確認して再度鳴らし、頷く。
          玄関の鍵を道具でいじる。カシャンという音。

 男2 「おっしゃ」

          きちんと靴を脱ぎ、細心の注意を払って歩を進める男2。
          キッチン方面から、ブタの貯金箱を持った女が近づいてくる。
          男2と女がリビングに入ると同時に、奥の戸から男1も。
          固まる三人。

男12女「あ」
  女 「ここんにちは」
 男12「こんにちは」
 男2 「何度もチャイム鳴らしたんだけどよ、返事がねえから」 
  女 「私も」
 男1 「じゃあ、お客さんですか」
 男2 「そうそう。決して怪しい者じゃねえぞ」
  女 「私も」
 男2 「この家の人、だよな?」
 男1 「そ、そうですけど。どちら様?」
 男2女「え〜と」
  女 「あ、コレ、そこに落ちてましたぁ」

          女、ブタの貯金箱を渡す。

 男1 「あ、ああ、ああ、探してたんですよ」
  女 「それはよかった」
 男2 「ブタ?」
 男1 「ところでええと」
 男2 「う。あ〜っと、さっきから気になってるんだが」
 男1 「はい」
 男2 「なんで2人とも土足なんだ?」
 男1女「…」
 男1 「ウ、ウチはホラ、アメリカンスタイルだから」
 男2 「ああ、アメリカンね。じゃあ、俺もクツ履いた方がいいのか?」
 男1 「いえ、そろそろ日本式に戻そうかなって。よし、脱ぎましょう」
  女 「は〜い」
 男1女「よいしょぉ」
 
          男1と女、靴を脱ぐ。

  女 「え〜と、玄関は何処だっけ」
 男1 「え〜とね」
 男2 「アッチだろ」
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