先輩の夢
先輩の夢

コバヤシ・・・コバヤシユウタ(20歳の男)
先輩・・・武田翔子(25歳の女)
店長・・・翔子の父
巨匠・・・ジョン(フランスの名の知れたパティシエ)

前編

前回までのあらすじ(ナレーション+イラスト付き)
たまたま、あたった5000万宝くじで遊びほうけ、自分探しというありがちな名目を盾に、就職活動を放棄し、ニート生活まっしぐらの所を親にこっぴどく叱られ、
コネでなんとか入社できた武田製菓店の万年皿洗いの使いっ走りのつまみ食い常習犯のダメダメ従業員コバヤシは自分が周りの同僚たちにくそ・ばか・あほ・まぬけと罵られていることを知り、さらにコバヤシの片思い相手である武田先輩が海外へいくことを知ったことで失意の末、死ぬことを決意。
しかし、ただ自殺するだけでは自分へのパワハラを社会に知らしめることが出来ない不当なこの状況を打開するためにダメダメ従業員コバヤシは会社のパティスリー厨房内にて首つり自殺を決行するのであった。

1
薄暗い厨房内。練炭や首つりの縄など自殺する準備が設置されており、それらを時折気にかけては死のうとするふりをするコバヤシ

コバヤシ「もう誰もいないよな・・・」
「ここにきて一年・・・月12万、手取りにして10万しか稼げないのに文句もいわず汗水たらして一生懸命働いたのにあんな言い方はないよな」
「そりゃあ、ここにきて一年皿洗いと床掃除と愛する武田先輩のケーキのつまみ食いするだけの仕事を残業無しの賄い付きで雇ってくれるようなとこはないだろうけどさ」
「しかしなんで俺がこんなとこで働かなきゃならないんだ。だいたい父さんも父さんだ。今更、小学生の時の卒業アルバムのなりたい職業を引っ張り出してくるなんて思ってもみなかったよ。」
「まあでも夢のケーキ屋さんになって、その仕事場で死ねるのだからある意味理想的だよな」
「よし、いまだな。死ぬ流れきてる。いまだ。・・・よし!死ぬぞ!すぐ死ぬぞ!」

ようやく決意し自殺道具にてをかけるコバヤシ
しかし縄は手をかけた瞬間にたわんで、ほどけてしまう。
コバヤシ「・・・・・あれぇどうした?今日も調子悪いなコレ」
先輩「調子悪いのはお前の頭だ!!!!」

先輩入ってくる

コバヤシ「わぁ!?」
先輩「あなたは2時間もなーにこんな夜中にちんたらちんたら時間をかけているの!?」
コバヤシ「武田先輩・・・?」
先輩「あなたが最近思い詰めていたから心配で長い間我慢して見ていたけどもう無理。限界です。コバヤシ君?あなたはどうしたいの!?」
コバヤシ「ええと・・・どうしたい、とは?」
先輩「死にたいのか死にたくないのか!それしかないでしょ、それしか!?」
コバヤシ「ええ!?あの、えっと・・・」
先輩「ああもうめんどくさい!早く殺してやりたいわ」
コバヤシ「ええ!?」
先輩「そうだ私が殺せば良いのか、あなた良いこと言ったわね。」
コバヤシ「言ったのは先輩です!」
先輩「やっぱり心臓を一突きかしらね、そのほうがきれいに死ねると思うの。そう鮮やかに!ぐっと、そうぐっと!」
コバヤシ「やめて!やめてください!殺さないでぇぇぇぇ!!!」

暗転→明転

先輩「だから死にたくなった・・・と。そういうわけなのね」
コバヤシ「はぁ、はぁ、はぁ・・・・先輩、なんでさっきのクダリから急にそんなに落ちつけるんですか?」
先輩「しかしあなた、よくそんなあほくさい理由で死にたくなったね」
コバヤシ「そんなの・・・俺の勝手じゃないですか」
先輩「本心では死にたくないとこを見るに当のコバヤシ君本人もあほくさいと思っているのでしょうけど」
コバヤシ「もう放っておいてくださいよ」
先輩「そうはいかない。悩める後輩の悩みだもの」
コバヤシ「・・・先輩」
先輩「なに?」
コバヤシ「先輩の夢ってなんでした?」
先輩「どうしたの急に」
コバヤシ「別に急でもないですよ、さっきの俺の話しの続きです。俺は夢も希望もない自分に嫌になったので、先輩の夢を聞いて参考にしようかと思って」
先輩「ふーん。・・・私の夢はね。パティシエ」
1/8

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム