休日の朝
下宿「安閑」
下宿「安閑」 休日の朝

登場人物

 想助(そうすけ):下宿「安閑」の管理人。早寝早起き、料理が上手で、周辺住民とも仲が良い好青年。下宿人たちには料理の評判がいい。
 雛菊(ひなぎく):下宿に住み着く幽霊。どうやら大正時代の子供のようだ。想助がお気に入りで彼にしか見えない。
 藍葉(あいは):下宿人の小説家。主にファンタジー小説を書く。よく徹夜をする。
 優歌(ゆうか)・灯(あかり):想助の姉の子供。姉と共に下宿に住んでいる。優歌はしっかり者・灯は深く考えないポジティブ。中学二年。

声だけの人物
 礼次郎(れいじろう):下宿人。菓子店に努めているパティシエ。お店で請け負う結婚式のケーキ作り等で、たまにお店から帰れないときがある。
 百合(ゆり)・新凪(にいな):両親が長期の海外出張のため、安閑に下宿している姉妹。百合は大学2年生、新凪は高校3年生。今回は名前だけだが、かぐやも姉妹の一員、小学6年生

あらすじ
 下宿「安閑」の休日の朝の風景。
朝ごはん、持たせる御昼ごはん、下宿人の面倒…
管理人の仕事は朝から多いのだ。
これは、そんな朝のひと時である。
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〇早朝 カウンターキッチンのある食堂はまだ暗い。
    台所に、想助がエプロンを締めながら入ってくる。

想助「おはようございます……って誰もいないんですけどねぇ。さて、やりますか」

    台布巾を濡らしてしぼった後、台所にある下宿人たちの予定表を確認。

想助「今日は……ちびっこさん達は図書館に行くのでおにぎり、礼次郎さんはお店にお泊り、物書きの藍葉さんは、締め切り前の缶詰状態で本日の予定は不明、学生さん達は部活でおにぎり……ですか、OK」

    確認が終わると、台所のカウンターを拭き、朝食で使う皿などを並べていく。
    台所へ戻ろうとすると台所の入り口に雛菊が通せんぼをしている。

想助「雛さん、おはようございます」
雛菊「おはよー、ここを通りたければ私を倒してみよ」
想助「……倒すも何も、貴方は幽霊でしょう。通りますよ」
雛菊「むー、つまらーん」

    通ろうとすると、雛菊が不満げな顔でよける。

想助「今から、朝ごはんとおにぎりを作るんです」
雛菊「今日は何を作るんだ、想助?」
想助「朝ごはんに、味噌汁、卵焼き、あとは簡単にサラダを作って、持たせる昼食にはおにぎりを……今日は、えーと4人分のおにぎりを作ります。あ、あと藍葉さんにも……」
藍葉「あ、私の分はいいよ」
想助「え?」

    食堂の入り口から藍葉が寝ぼけ眼をこすりながら食堂に入ってくる。
    雛菊は他の人からは見えないものの、急いで隠れる。
    想助も内心焦る。
   
想助「……あ、いつもみたいに部屋まで持って行こうかと思っていましたけど」
藍葉「ううん、大丈夫。いつも持って来てもらって、悪いしね。締め切り前に缶詰になるのは、ぶっちゃけ自分のせいだから、今日はちゃんとここで食べるよ。…ところでさ」
想助「はい?」
藍葉「さっき、誰と話してたの?」
想助「…誰もいませんよー。独り言、でっかいね」
藍葉「なんか女の子の声、聞こえたような気もするんだけけど……疲れてんのかなぁ、私」
想助「そうですよ、お疲れなんですよ。昨日も徹夜でしたか?」
藍葉「んーん、てっぺん回って……2時にはちゃんと寝たよ。で、いったん起きたら、食堂から「でっかい独り言」ってのが聞こえてきたから寄ってみた。……ふあ、今何時ぃ?」
想助「んーと、今は……6時10分過ぎですね」
藍葉「早いのねぇ……ふあ……想助さん、何時に起きたの?」
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