月に叢雲/がっしょうコンクール
『 月に叢雲 』『 がっしょうコンクール 』  作:よしりん



  『 月に叢雲 』


        深夜の山中
        狭い車のシートに並んで座る二人の男
        その胸中を占めるのは‥ ある種の覚悟か
        あるいは諦めか

        目張りされた車内と七輪
        尋常でない雰囲気の中、やがてぽつりと口を開く


A    なあ‥。

B    うん?

A    本当にいいのか?

B    ‥ああ。

A    そっか‥。何か、悪ィな。

B    何が?

A    付き合わせちまった上に、男二人ってのもな‥。色気がなくて、むさ苦
    しいわな。

B    いいよ、別に。最後の最後にそんなの期待してないし。

A    だよなぁ。

B    消化試合の人生だ。未練はないし、踏ん切りが着いた。その意味では感
    謝してる。

A    そういってくれると助かるよ。

B    このさき生きてたら、0.00000001%くらいの確率で、何かい
    い事があったり、逆転できるかもしれない。でも、その確率を追うには
    ‥ ちょっと磨り減りすぎた‥。

A    だよなぁ。しんどいよなぁ。

B    ああ。もういい。もう十分だ。

A    十分頑張ったよな、俺たち‥。


        しばしの沈黙


B    なあ。

A    うん?

B    そろそろ着けてくれよ。このままダラダラしてたんじゃ、夜が明けちま
    う。
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