空飛ぶ伝言板
『空飛ぶ伝言板』                        作・瀧澤豚琴

  登場人物
  <1996年の高校生>
     
     健太
     陽子
     恵
     明日香
                   
  <現代の鉄道研究会の生徒達>
                 
     ヒメ
     カノ
     モーリー
     ヤッスン
     テラ
     アカリン

― ACT1 ―
  音楽と共に幕が開くと、舞台後方に駅のホームの端が見えており、その先端から線路に向かってスロープが続いている。
  そこから舞台手前に向かって歩道があり、それはかつて改札口だった位置へと続いている。
  一九九六年、どこかの地方都市からローカル線でしばらく行った、以前には駅員もいた筈だが、数年前から無人となった駅の粗末な駅舎。
  改札口の横には待合のベンチと伝言板が見える。そのベンチに健太が一人で座り、誰かを待っている様子。やがて―
  電車の発車音と同時に健太が立ち上がり、しばらくホームを見ているが、時計を見てあきらめたように伝言板に向かう。
  備え付けのチョークで『サキカエルケン。』と記入し去る。               ― 暗転 ―

  再び電車の発車音。溶明。やがて、明日香、陽子、恵の三人がホームに現れ、線路を渡って駅舎へ。

陽 子  ほらね、やっぱりいなかったでしょ。
恵   (伝言板を見ながら。)健太の奴! 電車一本待てないのかね、あいつは。それに何これ。漢字くらい使えって、ねえ。
明日香  あんたたち、本当に付き合ってんだよね?
陽 子  ま、一応・・・・
明日香  ヨーコ、あんたそれでいいわけ?
陽 子  だって、バイトだし、たぶん・・・
明日香  え? 何? 健太ってバイトしてんの? まさか・・・・
陽子   まさか、何?
明日香  (笑いをこらえて)フライドチキンじゃないよね?
恵    こんな田舎に、そんなものあるわけないでしょ。
陽 子  家、手伝ってるんだって。
明日香  へ〜。家って?
恵    養鶏場。
明日香・恵  !?(顔を見合わせて)近い!(爆笑)
陽 子  そんなに笑わなくても・・・・
明日香  あ〜、それでみんな・・・・
恵    チキン? いや、それは偶然。あいつ、小学校ン時ほんと臆病でさぁ。
陽 子  メグ! それ言うの本当に嫌がるんだから。
恵    あ〜、ごめんごめん。でもさぁ、健太のそれって、バイトって言うのかなぁ。
明日香  確かに。
陽 子  少しだけど、バイト代もらってるって。
明日香  へ〜、働く青少年なんだぁ。
恵    何、その古めかしい言い方。
明日香  今ちょっと、70年代がマイブームでして
陽 子  明日香だけじゃないでしょ、結構流行ってるよ、それ。
明日香  でもさぁ、家の手伝いなら、何とかならないの? 少しぐらい会う暇あるでしょ。
恵    そうだよ。そんなまじめに働く奴だっけ、あいつ。
陽 子  お金、貯めるんだって。
明日香  何のために?
陽 子  知らない。
恵    内緒なんだ!
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