あらすじ
ビルの側にある喫煙所で初老の男が煙草を吸っている。そこへひとり中年男がやってくる。初老の男はこの中年男に「わたし自殺したことがあるんですよ」と話しかける。驚く中年男に初老の男はこう言う。「いや、正確には、失敗したんですけどね」と。そして、初老の男はビルの屋上へと向かおうとする。中年男は必死になってそれを止めようとする。引き留められた初老の男はこんな話をする。「そういえば、先月も、このビルから飛び降りた男がいましたな」「私、たまたま見たんですよ。その男が、階段を上っていくところを」岸田國士の『命を弄ぶ男ふたり』を別役実が書いたらこうなるのでは?というような少し不気味な短編です。さらに膨らませたら、長編にもなりそうです。