白雨五人男女?
白雨五人男女?(しらさめごにんおとこおんなはてな)  高平 九  

                         
                       
キャスト  女社長        
      演歌歌手                
      ゲイの会社員               
       女子高生                              
      刑事                              

時  間   約30分
                       
舞台 下手にバス停留所の標識。「○○団地前」とか書かれている。目的地は○○駅。
   
プロローグ ─────────────────────────────────────

十月の下旬。月曜日の朝、七時半ごろ。煙るように白い雨が降っている。

音響 雨音(FI 10秒ほどでFO 続いて『雨に唄えば』※?@のイントロCI)

上手から傘を差した五人の男女?が、バス停に集まってくる。予定の時刻ちょうど。どうやらバスはいつもと同じで遅れているらしい。
ゆっくり歩く者、小走りの者、ちょっとつまづく者。傘で顔は見えない。全員客席に背を向けて並んでいる。バスを待っている感じ。

五人目が小走りに袖から出て来たところで……

音響 『雨に唄えば』のイントロで並び終わり、曲のハミング部分からダンス開始。

曲にのせてタップダンス風のダンス。しかしあくまで後ろ向きである。※?A
ダンス終了で再び客席に背中を向け、元のように並ぶ。曲もFO。

音響 雨音CI・女社長が前に出て位置につくのをきっかけにCO

     │下手の女社長が振り向く。傘で顔を隠したまま、数歩前に出て、やおら傘の柄を
     │肩に乗せ、見得(※?B)を切る(以下全員同じ)上品な洋服に似合わない長靴を履
     │いている。手にはハンドバッグ。                     
     │                                    
 女社長 │「問われて名乗るもおこがましいがアパレル業界で隠れもねえ……(見得。木が入
     │るチョーン」(傘をたたんで、急に普通になって)ああ、嫌な雨だわ。せっかくと
     │っておきの靴をはいてこようと思ったのに。よりによって雨だなんて。ついてない
     │わ。それにこの長靴。姑ったら「○○○さん、その靴の方がお似合いよホホホ」な
     │んて、ホント憎らしいわ。バブルの頃は、うちの業績も、うなぎのぼりでさ。「○
     │○○さん、そのシャネルとてっもお似合いよ。さすが元モデルねえ」なんて、お世
     │辞言っては小遣い銭せびってたくせに。どれだけ都合してやったかしれないわ。そ
     │れが、バブルがはじけて業績が下がったとたん、掌を返したようにあたしのこと小
     │バカにするようになって。あたしがここまで来るのにどんなに嫌な思いしたか全く
     │分かってないんだから。知ってる?日本の社長の中で女社長はたったの七%なんで
     │すってよ。そんな私の家族になれただけでもすっごく好運なのに、その恩も忘れて
     │……。銀行だって同じよ。いい時には「借りてくれ、借りてくれ」って頭下げてた
     │くせに、景気が悪くなったら「返せ。返せ」って。いつかしっかり返しやるわよ。
     │「倍返しだあ。負けてたまっか(出身地の方言で)」(取り乱す)……ああ、嫌な雨
     │だわ。また、バス遅れてる(いらいらして腕時計を見る)支店長との約束に遅れた
     │らどうしよう。今日は絶対に追加融資とりつけないと手形が落ちない。泣き落とし
     │でも色仕掛けでも手段は選ばないわ。(鏡をバッグから取り出して自分の顔をまじ
     │まじと見る)少し老けたかしら。イイエ、弱気は禁物。今日こそ支店長も手形も落
     │として見せる。そして姑をギャフンと言わせてやる。おーっ。(再び傘を開き見得)
     │「……もはや五十が六十と齢を重ね、色気はあるが金がねえ女社長の○○○(自分
     │の名前)!(見得。チョーン)」                     
     │                                    

音響 雨音CI・演歌歌手が位置につくのをきっかけにCO
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