彼と私の13分戦争
『彼と私の13分戦争』
※2011年作成

【キャスト】

文佳   (あやか)  大学二年生
文弥   (ふみや)  大学二年生
未玖   (みく)  大学三年生 サークルの先輩
藤    (ふじ)  大学二年生
水無月   (みなづき) 大学二年生

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

   とあるサークルの部室。
   水無月が部屋の隅で椅子に座り、ハードカバーの本を広げて黙々と読書している。

水無月   …。

   無言のまま、ページをめくる。

水無月   …。

   しばらくして、何かを感じたかのように読書を辞め、本を閉じ立ちあがる。

水無月  例えば、私たち人間という個体生命は、言葉という曖昧な媒体を使い意思を共
     有しようとする。それは曖昧で、不完全。不完全であるから、魅力的でもある。
     だがしかし私たち人間は、その使い方次第では便利な言葉と言う媒体に、自ら
     の思いを表すことがあまり得意ではないようだ。ほら、また同じ葛藤が繰り返
     される。

   そこへ、文弥と藤がやってくる。

文弥   だから、何度言ったらわかる。俺が謝ったところで、あいつの機嫌は直らない。
     そもそも俺には謝る理由がない。
藤    僕はそうは思いません。あの時あなたが譲歩していれば、彼女も気分を害する
     ことはなかったはずです。ここは男として、あなたから謝るべきではないでし
     ょうか。
文弥   嫌なこった。だいたい、あいつは普段から自分勝手で傲慢でやりたい放題。人
     の話になんて耳すら貸そうとはしない。こうなった以上、誰の相手もしないぜ。
藤    そうかもしれません。でも、あなたなら別です。あなたの話なら、彼女も聞く。
文弥   そんな根拠がどこにある。もしそんなものがあろうことなら、是非とも顕微鏡
     で細部まで観察してやりたいね。
藤    そう言わずたまには僕を信じてくださいよ。いいですか?少なくとも彼女はあ
     なたのことをこのサークルの誰よりも信頼している。それは彼女の日頃の行動
     を見れば一目瞭然です。あなたになら臆することなく自分をさらけ出せる、彼
     女はそう思っています。
文弥   へえ、そうかい。
藤    納得いかないようですね。
文弥   するつもりもない。
藤    なんならジュースでも賭けますか?まぁ、僕から言わせれば、彼女のそれは信
     頼というよりも恋慕、すなわち好きと言う感情に近いものだと思うのですが。
文弥   藤。お前、目は大丈夫か?
藤    視力は1.3です。
文弥   …。
藤    それはいいとして、彼女はあなたを信頼している。これは疑う余地のない事実
     です。しかし今回、あなたは彼女と真っ向から敵対した。これがどういうこと
     か、もうおわかりですよね。
文弥   さぁな。俺の知ったことじゃない。
藤    彼女はショックを受けているのですよ。あなたならすべてを受け入れてくれる、
     そう思っていたのに。とにかく、ここはあなたから謝るべきです。
1/7

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム