蜜のあはれ

蜜のあはれ

原作 室生 犀星
翻案 中元 未玲
脚本 新津 孝太


登場人物

おじさま
朝倉
金魚
おばさま
金魚屋
バーテンダー


    おじさま

    咳払い
    独白

おじ   あー、君を何とか小説に書いてみたいんだが、なんだか御伽噺になって
    しまいそうでね、ああ、もしかすると君という材料が間違いだったのかも
    しれない
    ……いよいよおじさんの小説もおしまいになったかな
    はかないね……。小説家の末路というのははかない。最後は金魚と
    揉み合ってのたれ死にってワケだ

    おじさまの家
    おじさま  机に向かい、筆を走らせている
   
    朝倉

朝倉   あの、三苫先生
おじ   あ? ああ。誰だ
朝倉   三峰出版の朝倉と申します。原稿を受け取りに来ました
おじ   あんたがか。いつものあいつはどうした、あの、あ、なんだっけ
    あの、大川は
朝倉   大川は急病で
おじ   は、なっとらんな
朝倉   代わりに、私が
おじ   ああ、あんたがもってくのか
朝倉   はい
おじ   ん、ふん。嫌だ
朝倉   え?
おじ   いやだ
朝倉   しかし、原稿を頂かない事には掲載できませんし、え、先生の連載を
    楽しみに待っている読者の方もいらっしゃいますので
おじ   俺の名前を言ってみろ
朝倉   なんですか
おじ   名前だよ。オレの
朝倉   三苫一文
おじ   職業は
朝倉   小説家です
おじ   そうだよ、小説を書いてたし、今も書いてる。有名な賞だって取った
朝倉   はい、存じております
おじ   この連載も結構な人気だって言うじゃないか
朝倉   はい、読者からのアンケートでも好評を頂いています
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