七年目の食卓
『七年目の食卓』(しちねんめのしょくたく)   
作・脚本 あいはらみえ


田中正男(まさお)(53)専業主夫。まじめな性格。
料理上手。七年前、最愛の長男の広樹(17)を事故で失う。
広樹の命日には必ず家族で夕食をとることを家族の決まりごととしている。
最近様子がおかしい長女の裕美(17)が心配。

田中恵子(けいこ)(48)看護士として一家の大黒柱となって働いている。
ちょっと特殊な能力(霊がみえる)を持っている

田中裕美(ひろみ)・長女(17)高校二年生。
兄を10歳のときに事故で失ってから、兄を溺愛していた父のことが心配。
父を苦悩から救ってあげたいと思っている。

田中広樹(ひろき)・長男(17歳のまま)七年前、父の誕生日にプレゼントを買いに行き、
事故で命を落とす。命日(父の誕生日の日)には必ず食卓に現れる。





田中家ダイニング夜
正男(53)柱時計を気にしながら食事の用意をしている。妻の恵子(48)帰宅。

恵子  「ただいまー。あー疲れた。今日は忙しかった上に、新人看護士は気が利かな
     いし、もう最悪〜」
正男  「お疲れ…」
   恵子奥の部屋に引っ込み、御鈴を鳴らす。
   奥から出てきた恵子の後ろに、広樹(17)がついてきて、テーブルに座る。
恵子  「裕美は?まだ帰ってないの?」
正男  (イライラして)「ああ、今日だけは7時に帰るって約束したのにな」
恵子  「パパ、あの子、毎晩遅くない?」
正男  「ああ、いつも十一時過ぎだ。なあ恵子、昨日、裕美の部屋を掃除していたら、
     机の上にプリントがあった」
恵子  「プリント?」
正男  「学校からだ。保護者宛に呼び出しで、日にちがとっくに過ぎていた」
恵子  「裕美、なんかしたの?」
正男  「分からない。だけど最近派手になってきた」
恵子  「まぁ年頃だものね」
正男  「この間見ちゃったんだ。あまりにも毎晩遅いから、
     帰って来る頃を狙って、コンビニで立ち読みして待ってたんだ。
     そしたらあいつ、男子生徒と帰ってた。制服姿で化粧してさ、楽しげに。
     それでそいつとは、コンビニの前で別たんだけど、そのあとどうしたと思う?
     玄関の前で(身振り手振り大きくゼスチャー交えて恵子に見せている)
     化粧を落とすわ、スカートの折り目を長くするわして、普段の裕美に変身した」
   正男の後ろに、帰宅した裕美が立っている。
裕美  「パパ、なにしてんの」  
正男  「あっ」

  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×

ダイニングテーブルに、正男、恵子、裕美座り食事している。広樹の席にも食事の用意、
そして花とネクタイが置いてある。広樹は無言で座ったまま。

正男  「肉じゃが作ったんだ」
恵子  (広樹に向かって)「広樹、大好きだったね。生きていればもう24歳か…」
正男  「時の経つのは早いな」
恵子  「広樹はパパのプレゼントを買いに行った帰りに、交通事故に遭っちゃった
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