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グッバイフレンド

　　　　　１

　暗転
　ＳＥ　電話の呼び出し音
　明転
　新太、下手。秋子、上手に座っている

秋子　こんばんは、新太くん
新太　こんばんはじゃねーだろ、秋子。今何時だと思ってんだ
秋子　夜十二時前
新太　分かってんなら電話してくんな、切るぞ
秋子　あ、待って。明日、二十歳の誕生日なんだ
新太　誰の？
秋子　私の
新太　あぁ、そういえばそうだな
秋子　だから死ぬの
新太　誰が？
秋子　私が
新太　なんで？
秋子　二十歳になるから
新太　だから、二十歳になるとなんで死ぬんだよ
秋子　実際に死ぬわけじゃないよ。一つの区切りって意味で
新太　一つの区切り？
秋子　うん。なんかさ、二十歳になるって特別な感じがするんだ
新太　どんな風に？
秋子　蛹から蝶になる感じかな？　きっと、見える景色や感じる世界が変わると思うの
新太　そんなもんか
秋子　そんなもんだよ。人生なんて
新太　……なんかあったのか？
秋子　用がなかったら電話しちゃだめ？
新太　お前、そのやり取り好きだよな
秋子　何もなかった。私、最初から何もなかった
新太　秋子、今、どこにいる？
秋子　どこにもいなかった。私、最後までどこにもいなかった
新太　秋子。……おい、秋子！
秋子　なーんてうっそーん！
新太　あのなぁ、冗談でもそんな風に――
秋子　良かった。まだ、心配してくれるんだ
新太　もう切るぞ
秋子　あ、そうだ。鶫ちゃんのこと、大切にしてあげな？
新太　鶫？　どうして？
秋子　あの娘、きっと新太くんのこと好きだよ
新太　は？　鶫は従妹だぞ。そんなわけあるか
秋子　新太くんはほんと何も分かってない。だから、そんなんだから……
新太　なんだよ？
秋子　ううん、なんでもない
新太　さっきから変だぞ？
秋子　変って言うなら、私達、ちゃんと彼氏彼女やってたのかなぁ？
新太　そりゃあ、カラオケも行ったし、水族館も行ったし、デートっぽいことはしただろ
秋子　でもそれってさ、なんだか、友人の輪から抜け出せてない気がする
新太　そんなもんか
秋子　そんなもんだよ、恋愛なんて
新太　話は終わり？
秋子　あ、じゃあ、最後に質問。もし私が死んだら、泣いてくれる？
新太　またそれか。そんなこと言うなよ
秋子　例えばの話。どうなの？
新太　泣く。もう思いっきり泣くと思う
秋子　そっか。うん、ありがと。じゃあ、バイバイ

　ＳＥ　通話の切れる音

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