パンクロッカー・インタビュー


『パンクロッカー・インタビュー』



《登場》
King=ヘビメタ系のド派手なパンク・ロック・ミュージシャン。40歳。
マネ=Kingのマネージャー。事務所直通。業界のヒト。
記者=『ピヨコクラブ』の記者。妙に丁寧なしゃべり。
心理b=Kingの心の中の人格。真面目。冷静なビジネスマン風。
心理y=Kingの心の中の人格。甘えん坊。幼い。純粋。
心理z=Kingの心の中の人格。謎。



■ド派手でイカレた感じのロック歌手Kingがマイクを持って立っている。
ビデオクリップの撮影で、断末魔の叫び声を上げて目玉が飛び出した(!)直後。表情固定。

声(監督)「はい、オッケーィ」
(部屋の明かりが点き、スタッフ達がそれぞれはけて行く)
King「ふぅ」
マネ「お疲れさ〜ん。(ペットボトルで飲み物を渡す)いい映像取れたよ、King。バッチリ! あと1シーン撮ったら終了。そしたら、後は映像が編集かけて、最高にイカシたビデオクリップに仕上げてくれるから」
King(給水しながら頷く)「…マネージャー」
マネ「ん?」
King「『イカシた』は古い」
マネ「へいへーい、キツイぜKing」
King「ふふ」(KILLのサイン)
マネ(KILLのサイン)
声(スタッフ)「一時間休憩デース」
マネ「あ、King悪いんだけどさ。休憩入る前に10分だけいいかな? 雑誌のインタビューを一件、お願いしたいんだけどさ。10分だけ。すぐ終わらせるから。ね?」
King(OKのサイン)
マネ「ありがとーKing。(奥へ呼ぶ)おーい!」
King「どこ?」
マネ「え、あぁ、『ピヨコクラブ』」

■場転。Kingの脳内。
by「ピヨコクラブ〜〜!!?」
y「ピヨコクラブだってさピヨコクラブ」
b「・・・(思案中)」
y「ねぇ、ピヨコだよ? ピヨコ? なんでなんで? 何でピヨコ? ピヨピヨぴぴぴぴぴぴ」
b「うるさい!」
y「だ〜ってピヨコクラブって子育て雑誌だよ。そっち系の雑誌の超大御所だよ」
b「知ってます」
y「何で僕のところにインタビューしに来るわけ?」
b「知りません」
y「知りませんじゃ困っちゃうよー」
b「私だって困ってます! 主婦向け子育て雑誌が、パンクロックバンド『D・N・D・N』(ディーネヌディーエヌ)のボーカルに何の用なのか」
y「インタビューだよ」
b「何を聞きたいのか!」
y「さぁ」
b「今一生懸命考えているのです。雛鳥のさえずりピヨピヨピーヨコクラブが、この私、泣く子も黙るCawDevilKing(カウ・デビル・キング)様に、一体何の用なのか」
y「インタビューだよ」
b「何が聞きたいのか!」
y「さぁ」
b「輝く宝をその腕に抱いて幸せの絶頂にいる母親・父親たちが、血の海から這い出てきた不幸の使者CawDevilKing、略してCDK、あるいはKingに、何用なのか」
y「インタビューだよ」
b「それは分かってますよ!」
y「『分かってる』って分かってる」
b「そりゃ分かってるでしょうよ。私は私で、僕は僕なんだ。それは分かりきってるんですから、分かってないことを分かるためにあれこれと考える時間をいただけますか!? 今ここで自分の内面分析してる場合じゃないので!」
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