こちら東京都警軽微犯罪係!
こちら東京都警軽微犯罪係!                作:老川 統

薬野 匡美 (くすりの まさみ)…女
毒腹 三太夫(どくはら さんだゆう)・おっさん・空き巣・町田刑事…男
バナナ屋・甘夏ミカン・田中…男

     第一話「そんなバナナ」

     舞台上にはバナナ屋が一人

バナナ屋 らっしゃいらっしゃい。安いよ安いよ。ほらほら奥さん、見てってよ。いい感じで青いでしょ。青いバナナがちょうどいい。黄色いバナナはダメだ。
     明後日食べるときにゃ、熟しすぎ。熟する前の青いバナナがいいわけよ。
     青田買いならぬ青バナナ買いよ。おっ、一房買ってくれるかい?さすがお目が高い。そんなことない?謙遜スンなって。お目が高いわりには腰が低い。はい、お釣り。
     また覗いてね〜。おっと、売り物がなくなった。ストックストック

     バナナ屋、店の裏にまわって倉庫を開ける

バナナ屋 さてと、ここに大量に仕入れたバナナが…。な、なんじゃこりゃ〜

     暗転
     暗転が明けると舞台には薬野と毒腹が
     二人とも皮がないバナナをむしゃむしゃ食べている

薬野   ムシャムシャ、警部、分かりました?
毒腹   ムシャムシャ、いやさっぱり
薬野   ムシャムシャ、ちゃんと考えてます?
毒腹   ムシャムシャ、それなりに
薬野   ムシャムシャ、しかしさっきからバナナばっかり食べていて、飲み物が欲しいですね
毒腹   ムシャムシャ、薬野君。これは捜査だ。遊びじゃないんだぞ

     バナナ屋、入ってくる

バナナ屋 そういうと思って、飲み物お持ちしやした
薬野   お、気が利くじゃないですか
毒腹   すみませんな
バナナ屋 いえいえ
薬野   で、これ何です?
バナナ屋 バナナジュースでさあ
毒腹   …もはやバナナを食べているのか、バナナに食われているのか分からんな
薬野   それより、警部…
毒腹   おっとそうだった本題に入りましょう
バナナ屋 ガイ者は、バナナ田バナナ男。41歳。職業はバナナの叩き売り
薬野   それはもう聞きました。あと自分でガイ者と言わないでください
毒腹   昨日、商品を補充しようと在庫のある店裏の倉庫に行ったところ、中のバナナがすべて中身だけ残して消えていた
薬野   すなわち、皮だけなくなっていたと
バナナ屋 間違いありやせん。で、刑事さん。皮がなくなったバナナを食べて何か分かりやした?
毒腹   今のところは何も。だが、少なくとも毒は入ってなさそうだ
バナナ屋 さいでやんすか
毒腹   一つ訂正させてほしい
バナナ屋 なんでござんしょう?
毒腹   今あなたは、私のことを「刑事さん」と呼んだが、刑事ではない
バナナ屋 でも警察なんでしょう?
毒腹   警察ではあるが刑事ではない。刑事というものは、一般的に刑事部に所属している警察官のことを言うのだ
バナナ屋 じゃあ、あんたら何者なんです?
毒腹   よくぞ、聞いてくれた!

     かっこいい音楽が流れる

毒腹   私たちは!
薬野   東京都警!
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