中二病だったあの頃
『中二病だったあの頃』
照明がつく。
スーツを着たサラリーマンの男が立っている。
「みなさんは、「中二病」という言葉をご存知ですか?
ちょっとネットで調べてみます。
(スマートフォンで検索する。)
『中二病(ちゅうにびょう)とは、思春期の少年少女にありがちな自意識過剰やコンプレックスから発する一部の言動傾向を小児病とからめ揶揄した俗語である。伊集院光がラジオ番組の中で用いたのが最初と言われている。』
だ、そうです。
さらに中二病には様々な症状があるそうで、
『不思議な・超自然的な力に憧れ、自分には物の怪に憑かれたことによる、発現すると抑えられない隠された力があると思い込み、そういった設定のキャラ作りをしている。』
──私にも昔、そんな時期がありました。
授業中に突然、右腕が疼き出し、「おさまれ・・・。くそ、こんなときに」
とか言ってみたり、
右目には特別な力があり、それを隠している──という設定で、無意味に眼帯をつけてみたりしたこともありました。
悪魔を退治するという使命のもと、友人は作らず、放課後は部活にも所属せずに、そのへんをブラブラしていたものです。
実話です。
──時には、クラスメイトを守るためという理由を勝手につけて、好きな子を家まで尾行したこともありました。
・・・今にして思うと、ただのストーカーです。
自分は特別な存在だ。自分は人とは違うんだ。
少数派であることをむしろ望んだ、そんな思春期。
今にして思うと、とんだ社会不適合者です。
学校ではよく言われました。「あいつはいったいなんなんだ」と。
でも今は、そんなことはもちろんありません。
私は今、28歳で、会社員をしています。
今日も営業の外回りでスーツを着て街を歩いているわけです。
別にサボっているわけではありません。
中二病・・・
そんな言葉を知ったのも最近でした。
思春期の、当時の私は、これは自分だけの特別な症状なのだと思っていました。
でも、現実には全国の子供たちに、誰にでも起こり得る、陳腐的な現象だったのです。
自分は特別だ。自分は他人とは違う。そんなことを誇らしげに思っていたあの頃。
でもそんなものは幻想でしかなく、人間はどこまでも普通で、普遍で、本当の自分などどこにもないのだと知りました。
中二病といえば、
二つ名とか異名とかそういった呼び名を考えてつけるのも中二病の痛い症状です。
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