それでも世界は回ってる
「それでも世界は回ってる」 作 結城翼
★登場人物
女1・・・掘る女
女2・・・編む女
女3・・・派遣の女
少女・・・
少年・・・
♯1 六道の辻
縦笛(ないしはリコーダー)でややたどたどしく、ゆっくりと「星めぐりの歌」が流れる。
幕が開く。溶明。
舞台中央に近代科学文明の所産の家電を中心としたがれきの山。
古い木製の学校の椅子が6脚ぐらいその中にバラバラに積まれている。古びて、壊れかけた赤茶けた(しか し壊れていない)自転車もある。
ゴミとがれきの山少し下手側奥に、やや高いところがあり(できれば土があればいいが難しいかも。) ゴミとがれきの山の中に傾いて壊れかけた白い十字架のようにも見える道標があり、左右および、前方に向 けて先の尖って(あるいは半分こわれててもいい)むなしくたっている。かかれている字はぼや けたか汚れたかで読めない。
あたりは一面、枯れ葉で覆われている(枯れ葉がなければ生の木の葉でもいい)。
黄昏時のようだ。
女がいる。迷彩服(袖に黒いリボン)にからみつくような髪をかき上げ、いらだたしく顔を振り、汚れた手で ぬぐいながら女が道標の脇で穴を掘っている。
固くてなかなか掘れない。それでも、掘り続けている。
ゴミの山の下、中央やや上手よりに、古い生徒用の椅子に腰掛け、編み物をしている女がいる。下手そうで、 ぶつぶつ編み目がどうのこうのといいいながら。時々、ちらっと掘る女をみるが、ようやるなーという風情 でまだ編み物をしている。そばにはからのペットボトル。飲もうとして、空なのに気づきいらだちあきらめ たようにまたそばに置く
掘る女の息が少し上がっているようだ。
しんどそうに女は掘るのを一時やめ、シャベル(土などで汚れていること)を抱えて座りこみ、物憂げにやお らポケットからレコーダーをだし、録音し始める。そばにはもう一つシャベルとペットボトル。
「星めぐりの歌」消えていく。
掘る女:16時00分(いちろくまるまる)。たぶんそれくらい。一日掘ってやっと10センチ。なかなか固くて掘れない。
いったん録音をとめ、眉間をもんだりする
ぼうっと穴を見ている。
また、録音する。
掘る女:たかだかたて165センチ、横60センチ、深さ80センチで良いのに(このサイズは役者のサイズに合わせて少し大きくする)。
ほっと息を吐いて。
掘る女:私を拒絶しているように土は硬い、
見上げて。
掘る女:なんて、この世界は敵意に満ちあふれているのか。私はただ、ささやかな穴がほしいだけなのに。
録音を切る。レコーダーをポケットに押し込む。
再び穴へ向かう。
だが疲れているのでうまく掘れないようだ。
編み物をしている女、やれやれという表情で手を止め。
編む女:無駄だと思うけど。
ぴくっとするが、それでも掘る。
編む女:疲れない?
答えない。
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