そこにいたんだ
そこにいたんだ
登場人物 : 山田一太郎、田畑花子
二人とも本を読んでいる。
一太郎 とてもとても、不思議なことがありました。
毎日のように、こうやって本を読んでいると、突然、それは、やってきたのです。
僕ですか?
山田一太郎です。
その本の中から、声が聞こえたような気がしたので、そう答えました。
花子 こんにちは。
私の目の前が、トンネルから抜け出た時のように、まぶしく光り輝いて、
その中に誰かが立っていました。
その光は、なぜか私の持っている、この本の中に集まっていたのです。
私は、田畑花子。
聞こえた気がしたんです。
一太郎 あなたは、今、なにをしているのですか?
あまりにも突然だったので、何も考えずに質問してしまいました。
ぼくは…と言いかけて、今の自分の状態をもう一度確かめてみました。
花子 私は、今、何をしているのだろう?
していることは、分かっているんです。
でも、それで正しいのかもわからないまま答えてしまいました。
2人 私(僕)は今、本を読んでいるんです。
2人とも、周りを見たり、本を確かめたりしている。
一太郎 あの…
花子 …
一太郎 あの…
花子 …はい。
一太郎 聞こえる?
花子 え?ええ。聞こえます?
一太郎 とてもよく聞こえます。
花子 あなたは…
一太郎 はい?
花子 あなたは、どこにいるの?
一太郎 僕ですか?僕は…喫茶店です。
花子 喫茶店…。
一太郎 はい。失礼ですが、あなたは、どこに…?
花子 私は…、喫茶店です。
一太郎 え、本の中ではなくて?
花子 あなたの方こそ、この中じゃないんですか?
一太郎 いえ。喫茶店です。
花子 私だって、喫茶店です。
一太郎 あの…どちらの喫茶店ですか?
花子 え?どうして?
一太郎 いや、なんとなく…違う喫茶店かな〜って思って。
花子 違う喫茶店?
一太郎 はい。だったら、まだ良いかな〜と思って。
花子 …なんとなく、違ったら、安心できるような気がします。
一太郎 でしょ。何かの力で、電話みたくなってて、会話できる。
花子 そんなことある?
一太郎 …かもしれないでしょ。
花子 …まあ。
一太郎 じゃ、喫茶店の名前、同時に言ってみましょう。
花子 わかりました。
2人 1、2の3。「カフェピアノ」
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