サンタクロースがくれたもの
「サンタクロースがくれたもの」
                   作 :外山タカキ

登場人物
サンタクロース:新米サンタ。どじっこだが、優しい。母性的。
トナカイ:まじめで事務的。
鈴森幸雄(父):母親が亡くなったことで、荒れてしまい。何もやる気が出ない。
鈴森聖(兄):母親が亡くなってから、やさぐれる。口が悪い。
鈴森登夢(弟):母親が亡くなってから心を閉ざす。無口。
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 今日は楽しいクリスマスの夜。雪のホワイトクリスマスだ。
 新米サンタを乗せたトナカイは夜空をかける。
 そりから見下ろす雪で覆われた町はきれいだ。
 
サンタ「みなさん!メリークリスマス!靴下の準備は大丈夫かな?良い子はもう眠ったかな?世界中のいい子で眠っている子どもたちに素敵なプレゼントをあげるよ!」
トナカイ「あんまりうかれているとソリから落っこちますよ」
サンタ「大丈夫だよ!」
トナカイ「今日が初仕事ですからね。事故のないようにお願いしますよ」
サンタ「そう!今日がサンタの初仕事♪」
トナカイ「特にサンタクロースはほかの人に見つかっちゃダメですからね。わかってますよね?」
サンタ「大丈夫だって、へまはしないよ」
トナカイ「時間はないから早く終わらせちゃいましょ。寒くてかなわない。」
サンタ「わかってるって♪トナカイ、最初の家はどこ?」
トナカイ「最初はあそこの家ですね」
サンタ「よーし!あそこが最初の家!初仕事はこの家に決まり♪」
トナカイ「ぱっぱと片づけてくださいね。くれぐれも人に見つからないように」
サンタ「OKOK。あれ?煙突がないよ」
トナカイ「ああ。最近はこういう家が多いんですよ。煙突がない家」
サンタ「えー。じゃあ、どうするの?」
トナカイ「玄関から入ればいいんじゃないですか?みなさん、そうしてますよ」
サンタ「えー。つまんない」
トナカイ「つまんないって仕事ですよ。遊びじゃないんですから」
サンタ「煙突からひゅーんって落ちるのが楽しかったのに」
トナカイ「とにかく、行ってきてください。くれぐれもサンタクロースだってばれないように」
サンタ「わかってますって。行ってきまーす!」
トナカイ「大丈夫かなあ?」

 幕開く。
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 小さな家の茶の間。
 舞台中央のテーブルの上に食べかけのケーキとリモコンとコンビニ弁当のから。
 上手奥には幸雄の妻である美雪の遺影が置かれている。
 下手奥には布団が敷いてあり、聖、登夢が寝ている。
 部屋の中は騒然としていて、ペットボトルやビールの空き缶などが散らかっている。
 テレビからジングルベルが聞こえてくる。
 幸雄はテレビを見ているというわけでもないからとりあえずついているといった感じだ。手元にある缶ビールを飲む。「ふぅー」というため息。
 ジングルベルの音がやかましくなったのだろう。テーブルの上にあるリモコンをとり、テレビの電源を切る。
 幸雄は遺影のそばにある鈴をならす。そのまま手を合わせずにぼーっとしている。
 静寂。
 サンタがやってくる。

サンタ「えっとー・・・おじゃまします。」

 幸雄とサンタの目が合う。

幸雄「だれだ?おまえ」
サンタ「あ・・・あの・・・すみません。サンタクロースです」
幸雄「サンタクロース?」
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