地球でクラムボンが二度ひかったよ(改作版)
宮沢賢治が原爆のピカを見た

「地球でクラムボンが二度ひかったよ」(改作版)
―宮沢賢治が原爆のピカを見た(一幕一場)―
2012.1.16(初稿)
2024.7.21(最終稿)
2024.9.5


【あらすじ】
賢治先生(宮沢賢治)が、銀河鉄道の駅の近くの展望台から望遠鏡を覗いていると、地球がピカッとひかったのです。
そもそも地球は惑星ですから、自らはひかりません。ふだんは宇宙の闇の中にまぎれているのですが、
その日はなぜか一瞬ひかりを発したのです。賢治先生は、よだかに自分の幻覚ではなかったことをたしかめ、
クーボー大博士にその説明を求めます。博士の話によると、展望台は地球から79光年離れていて、
あのピカは、原子爆弾の閃光かもしれないと告げます。
79年前、広島に落とされた原爆のピカが79光年を隔てたこの銀河鉄道の駅にいま届いたというのです。
光を追いかけるように竃猫からの電報が届いたと月夜のでんしんばしらが持ってきます。
竃猫は、広島にある猫の事務所に四番書記として勤務しているのです。
電文でもたらされた広島の被害状況は悲惨なものです。3通目の電報は、竃猫が飼われている家の主人である
原民喜の詩です。
原爆を記録した詩です。
原爆の被害から、原爆の開発秘話に話が進み、大統領宛に研究を勧める手紙を書いたということで、
銀河鉄道に同乗していたアインシュタインが呼び出されます。
………………………………
原爆の被災を放っておけず、賢治先生は昭和20年の地球に戻ろうと決意します。
しかし、現在地は地球から79光年離れた銀河鉄道の駅です。光の速度で飛行しても地球に帰り着くまでに
79年かかります。瞬間移動できたとしても、現時点の地球は戦後79年の地球です。
では、賢治先生は、どのようにして戦争末期の地球に帰還できるのでしょうか。
あとは読んでのお楽しみ……。

【では、はじまりはじまり】
舞台の背景は星空。銀河が斜めにかかり、それに沿うように銀河鉄道の線路が延びている、そんな絵柄。
場所は銀河鉄道の白鳥駅のプラットホーム。銀河鉄道の列車が止まっている。
コイン式の望遠鏡が二つ客席に向かって並んでいる。白鳥駅の看板、下に左矢印蠍座駅、右矢印大熊座駅。
昔風のベンチもある。

【登場人物】
 宮沢賢治 (賢治先生と呼ばれているが、銀河鉄道の車掌でもあり、賢治の写真にあるような
黒いコートに帽子姿、ただし帽子は車掌帽)
 月夜のでんしんばしら ボール紙を巻き付けてそれらしい扮装で
 クーボー大博士 白髪のお茶の水博士の風貌
 よだか 嘴つきの帽子のような被り物、羽をつけている。
 ジョバンニ ふらっと家を出てきたような私服
 カンパネルラ おなじく私服
 鳥捕り 赤ひげ
 青年 姉弟の家庭教師、学生服
 女の子 姉
 男の子 弟
 アインシュタイン 白いつなぎの作業衣に、アインシュタインのお面を頭に冠り、
パイプを持っている
 バナナン大将 軍服にお菓子の勲章をつけている
 グスコーブドリ 精悍な若者

【一幕一場】
(幕が開くと、宮沢賢治先生とよだかが望遠鏡を覗いているが、幕が上がりきった時点で
よだかは賢治先生の後ろに控える)

賢治先生(望遠鏡から目を離して) 「なあ、よだかよ、おまえも見たか、あのひかりを。
わたしはついさっき望遠鏡を覗いていて、偶然目にしたのだ。
天の川の底の砂金の粒が揺れたような小さなピカを……。」
よだか 「はい、賢治先生、たしかに私もみました。
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