小話
『小話』 

<小話1>
冷戦の延長として宇宙進出競争が盛んになり、とうとうアメリカは有人宇宙飛行を実現させた。
その時アメリカの調査隊は、宇宙空間ではボールペンが使えないことを発見した。
報告を受けNASAは、40億ドルの予算と10年の歳月をかけ、とうとう宇宙でも使えるボールペンを開発した。


一方ロシアは鉛筆を使った。

<小話2>

「ちょっとー飛ばしすぎじゃないの?」
「そうかー?俺のドラテクならまだ余裕だぜー?」
「もーお酒飲みすぎだってー。私メットしてないんだからねー」
「大丈夫だってー。……お、今落ちてたのメットじゃね?」
「うそー。ヘルメットが落ちてるわけないじゃん」
「ほんとだって。ちょっと拾ってくる」
「もー」

……………

「やっぱメットだったよ」
「へー。ラッキーだねー。あれ、何で拾って来なかったの?」
「いや、使用中だったから」

<小話3>

ある日のこと、いつものように帰宅途中で駄菓子屋に寄った。
お気に入りの30円のソースカツのところへ行くと小学生くらいの子供がいた。
妙にそわそわしているので少し隠れて見ていると、ソースカツを掴みポケットに入れた。
「万引きだ」そう思った僕は足早に去るその子を追いかけた。
近くの公園で声をかけ、万引きのことを訊くと、涙を一杯に浮かべてこう言った。
「うち、貧乏で……お菓子も買えなくて……父ちゃん帰って来ないし」
泣きながら話す子供に優しく言った。
「大変だな坊主、でもな、お前が悪いことをしてどうするんだ?貧乏だからこそ、お前が母ちゃんを助けてやらないと」
子供はしばらく泣いていたが、やがて涙をふいて言った。
「ごめんよ兄ちゃん。僕もう悪いことはしないよ」
「よし、駄菓子屋さんには兄ちゃんが謝っといてやるから、もうするんじゃないぞ」
「うん」
しわくちゃになったソースカツを僕に手渡し、手を振って子供は帰っていった。
僕は久々に素直な子供を見て爽やかな気持ちに胸を一杯にして、ポケットのソースカツを食べながら家路についた。
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