夢追人とリアリスト
『夢追人とリアリスト』
登場人物
天野(アマノ)……大学生。天文学に惹かれ、宇宙にロマンを抱く青年
間宮(マミヤ)……大学生。天野の友人。クールで皮肉屋。自称、リアリスト
明転
双眼鏡を持ち、夜空を見上げている天野
その横に座り、つまらなさそうな様子の間宮
天野 「いいかぁ、あの一番光ってるのがベガ。そんで、あれがアルタイルで…。
あっちがデネブな」
間宮 「うん」
天野 「この三つを結ぶと、見事な直角三角形になります。はい、これを何という
でしょうかっ!」
間宮 「うん」
天野 「その通り、夏の大三角です!はい、次、南の空に見えますのは…」
間宮 「なぁ」
天野 「あの赤っぽい星、わかるか?あれはアンタレスっていって、
さそり座の一部……」
間宮 「なぁ、おい。天野!」
天野 「何だよ!解説中なんだから、静粛に願うよ!」
間宮 「もう帰らねぇ?」
天野 「はあああ!?何言ってんだ、お前!?」
間宮 「だってさー…。やっぱつまんないよ、天体観測なんて」
天野 「お前、馬鹿!何でこのロマンがわかんないかな!」
間宮 「暇だったから来てみたけどさ、俺にはそのロマンはわからないみたいだ」
天野 「はぁ、やれやれ…。間宮、お前は人生の半分は損してるぞ」
間宮 「そんなに?」
天野 「この広大な宇宙に広がる数々の星!まさに自然の神秘とも言える!
どうだ、ワクワクしてくるだろうが!」
間宮 「いや、別に…」
天野 「かぁぁ、つまらん奴!」
間宮 「悪かったな。俺はお前と違って、リアリストだ。
ロマンチストとは対極だよ」
天野 「出たよ、間宮君の決め台詞が」
間宮 「カッコいいだろ」
天野 「全然よくないね!男は、ロマンを追うために生まれてきたと言っても
過言ではない」
間宮 「そんな簡単に男の存在意義を定義されてたまるか」
天野 「じゃあ、男の価値って何だよー、言ってみろよー」
間宮 「決まってんだろ。どれだけ良い女と付き合えるか、だよ」
天野 「この下種が!」
間宮 「うるっせーよ!結局なぁ、男なんてそんなもんなんだよ」
天野 「俺は違うからな」
間宮 「どうせ星見るんなら、彼女と見たいぜ…。ああ、俺何やってんだろ。
切なくなってきた」
天野 「ふっ、独り身は寂しいな」
間宮 「お前もだろうが」
天野 「俺は星々と恋をしている」
間宮 「お前、何言ってんの」
天野 「あたかも織姫と彦星のような恋をしたいわけだ」
間宮 「よくわからんけど、お前も一応、男の子なんだな」
天野 「二人は一年に一度しか会えないんだぞ。まさに一夜限りの逢瀬。
ああ、なんて儚いのだろうか…」
間宮 「あー、遠距離って確かに嫌だわ。せめて一週間に三回は会いたい」
天野 「お前の意見は聞いていない!ちょっとは話合わせてよ」
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