弟子にして下さい(オタク編)
弟子にして下さい!(オタク編)


  わりと人が多そうな公共の場。

  男2の前に、男1が突然現れる。

男1「・・・西嶋さん」
男2「また君か・・・」
男1「西嶋さん・・・」
男2「何度来てもダメだよ・・・」
男1「西嶋さん、お願いします・・・俺を弟子にしてください・・・」
男2「だからこないだも言っただろ。帰ってくれ」
男1「お願いします。お願いします・・・。俺には、もうこれしかないんです。
   俺にはもう、あなたしかいないんです!」
男2「そんなこと言われてもねえ・・・」
男1「お願いします。弟子にしてください!」
男2「いや、弟子とかそんなこと言われてもね・・・」
男1「俺、あなたのようになりたいんです!
   俺、なりたいんです!
   俺、オタクになりたいんです!!!」

  間。

男2「(周囲を気にしながら)いや・・・君、ちょっと静かにしてくれるかな?」
男1「お願いします、俺、オタクになりたいんです!」
男2「いや、オタクとかそういうのってなろうと思ってなるものじゃないと思うんだけど・・・」
男1「え・・・違うんですか・・・?」
男2「違うんですかって、驚き過ぎでしょ」
男1「そんな・・・俺の将来の夢は、オタクになることだったのに・・・」
男2「意味わかんないよ。オタクは別に職業とかそういうんじゃないから」
男1「違うんですか?」
男2「違うよ。普通わかるだろ」
男1「ショックだなあ。西嶋さんがそんなこと言うだなんて。
   オタクの中のオタクの西嶋さんが、まさかそんな風に言うだなんて」
男2「あのね、だいたい僕はオタクじゃないから」
男1「え・・・・・・!?」
男2「いや、驚き過ぎでしょ! オタクじゃないから」
男1「え? 違うんですか?」
男2「違うよ! どうして僕がオタクにならなきゃいけないんだ」
男1「西嶋さん、あなた、ご自分の顔を鏡で見たことありますか?」
男2「失礼な奴だな君は!」

  大声を出したことで周囲の視線が集まってくる。
  男2、少し小声になる。

男2「そもそもどうして君はそんなにオタクになりたいんだ」
男1「だって、オタクってなんだか人生楽しそうじゃないですか」
男2「は?」
男1「だってあいつら、毎日のようにアニメ見たりゲーム見たりして、現実逃避してるんですよ。
   なんて楽な生き方なんだ。うらやましいですよ」
男2「君さあ──」
男1「オタクになったら、毎日が楽しくて仕方がないんだろうなあって。
   オタクって悩みがないんだろうなあって」
男2「君さ! ・・・それは、オタクの人に対して失礼なんじゃないのかなあ」
   オタクの人だって、別に楽に生きてるわけでも、悩みがないわけでもないと思うけど」
男1「すみません! 別に俺は、西嶋さんのことを言ってるわけじゃなくてですね、」
男2「あのさあ! 君、僕がオタクみたいな言い方するの、やめてくれないかな?」
男1「すみません西嶋さん。そうですよね。西嶋さんは、他のオタクとは違う」
男2「だからね──」
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