EXISTENCE Ⅱ
神埼 夢月(カンザキ ムツキ)・・・小学6年生。1組。春に転校してきた。市立鶴野小学校の生徒。
神埼 夢(カンザキ ユメ)・・・鶴野小学校の国語教師。生徒に国語を教えながら趣味で小説も書いている。
長野 信夜(ナガノ シンヤ)・・・鶴野小学校の6年生。1組。学級委員。真面目で親切な性格。
北村 友星(キタムラ ユウセイ)・・・鶴野小学校6年生。1組。将来の夢はサッカー選手。元気で快活。
高坂 美宇(タカサカ ミウ)・・・鶴野小学校6年生。1組。女子のリーダー。口が悪い女の子。人にも少し厳しい。
名無しピエロ(ナナシピエロ)・・・夢幻の世界の支配者。人が封じ込めた物を管理している。
風車 海斗(カザグルマ カイト)・・・夢月の夢の中の住人。20前後の青年。
舞台監督のQ。客入れ音、F・O。
少し間をおいてM・0 IN。照明、徐々に暗くなる。暗転。
海斗、夢月、下手サス位置。夢、センターに立つ。上手サスに名無しピエロ。
舞台監督QでM、F・O。明転。上手のサスがつく。
名無しピエロ「あなたはまだ気づいていない。封じ込めた想いに。あなたはまだ知らない。あの時あの瞬間、時間が静かに止まったこと。それは正にかくれんぼ。」
センター、照明。
夢「彼女は夢を見る。忘却の彼方の彼女は、その心と体の休息の中で確かに夢を見るのだ。その夢は静かな夜、満月の明かりだけが浮かび上がらせる風景の様に大人しく、美しい。」
名無しピエロ「忘却の彼方の女の子・・・ね。夢を見るってことは、何かを想像したりもするのかい?」
夢「(名無しピエロにニコリと笑いかけて)彼女の夢。その蒼白い月の下。そこに彼はいる。そう、存在していない彼女の夢。その中にまた、確かに彼はいるのだ。」
名無しピエロ「つまりは幻の中の幻。その彼もまた、彼だけの幻を見るのだろうか。」
夢「夜霧がうっすらと広がる小高い丘。少し湿気を纏った風は優しく笹の葉を揺らしている。ゆっくりと口を開いて彼は言う。『ねえ、あると思う?ないと思う?』」
下手のサス、IN。M・1、IN。
海斗「ねえ、あると思う?ないと思う?」
夢月「何が?」
海斗「星。」
夢月「星。沢山あるじゃない。」
海斗「今見えているから、星はあるの?」
夢月「難しいこと聞くね。じゃあ・・・そう、真昼に星は見えないでしょ?その時、星はないって言える?」
海斗「・・・言えないな。」
夢月「ほら、やっぱりある。」
海斗「うん。・・・あのさ、僕思うんだ。」
夢月「何を思うの?」
海斗「この広大な宇宙の中では、僕らは小さな点にすらなれないでいる。」
夢月「小さな点・・・そうだね。時間も距離も、大きすぎる。」
海斗「これを教えてくれたのは君だったね。」
夢月「え?私、こんな話したっけ。・・・ごめん。」
海斗「いいんだ。」
夢月「でも、私何も(覚えてなくて。)」
海斗「いいんだ。君が沢山の物をここに持ってきてくれる。ありがとう。」
夢月「・・・うん。」
名無しピエロ「そうそう!あれは恋だった。本来なら起きた瞬間忘れてしまうような、そんな恋。」
夢「いつだって遠い世界は美しく見える。同時に、手が届かない物は、自分の居場所を教えてくれる。でもそう、決して・・・決して追ってはいけないもの。」
名無しピエロ「ふ〜ん、それは、本音なの?夢。」
夢「もちろん。夢の中の夢に溺れるなんて正しくない。夢は夢のまま。だから美しい。」
名無しピエロ「正しくない・・・か。相変わらずクールだね?」
夢「放っておいて。」
名無しピエロ「じゃあ、あの彼女の感情が嘘だとでも?」
夢「え?」
M・1、F・OUT。
夢月「・・・いちゃ駄目?」
海斗「え?なに?」
夢月「ここにいちゃ、駄目かな?」
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