おにひと

『おにひと』

 / 鬼ごっこ、人ごっこ。

CAST 由希
     昴
     響
     母
     女
    


第一章

     十一月二十四日(木)

 場所は由希の部屋。
 女子高生の部屋にしてはひどく殺風景でほとんど物が置いていない。

 部屋には男が二人。
 一人は虚ろな目をした少年。部屋の中央でぬいぐるみを抱えて遊んでいる。その姿はま
るで無邪気な子供のそれである。
 一人は目つきの鋭い青年。部屋の隅で落ち着かない様子のまま中空を仰ぐ。イライラと
しながら自らを押さえつけているかのように見える。

 しばらくして部屋のドアが開く。
 私服姿の由希が通学鞄を持って登場。

由 「ただいま」

 疲れ半分で言うや否や、響が飛びかかる。

響 「ゆきー」

   抱きつくすんでのところで叩き落される。

由 「うるさい」

   次は両手を広げた昴が迫ってくる。

昴 「ユキー」

   が、やはり少女の拳にふっとばされる。

由 「ウザイ」

   事も無げに男二人を地に伏した後、鞄を床に置く。

響 「ゆきー!」
昴 「ユキー!」
由 「しつこい」
   
   再度野郎共を軽々と捻じ伏せる。

由 「あんたらも何度も何度も飽きないわね」
昴 「そりゃあもう、趣味みたいなものですから」
由 「…………」
響 「ねえゆき、おみやげは?」
由 「ない」
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