花交ヶ池
花交ヶ池 ver.1.0 作:白神貴士
霞…母に死に別れた子供・炭焼きの父と二人暮らし。
月姫…花交の森を治めるモノノケの長。龍の化身。
古狐のロク…森の長老・ご意見番
土鬼…無口な鬼
河童の三郎太…みなし子の河童。
天狗の九郎…親の代から森に棲む天狗。
*初演は1人のナレーターが全ての声を担当する
仮面劇として上演されました。
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静かな音楽が始まる。
河童の三郎太が花交の池の水面に浮かび上がる。 (ここは人形…)
キョロキョロとあたりを見回して泳いで去る。
♪迷子唄
心迷う は 道迷う
木漏れ日 落ちる 森の道
胸の 騒ぎに 誘われて
足の 向く先 急ぐ先
繁み掻き分け 薮潜り
辿り着いたは まか不思議
いつか見た夢 聴いた声
光飛び交う 森の池
森の奥から迷子になった霞が不安そうに出てくる。
と、島の中央に立ち上がった人影。
美しい女の姿をしている。
実は花交の森に棲むモノノケたちの長たる月姫の変化した姿だ。
月姫
「これ、そこな童…どうした?道に迷うたか?」
霞
「あい。何だか森の奥からあたいの名前を呼んでるような気がして…
暗くて怖かったけど、もう少し、もう少し、行ってみようと歩いてたら、
ここまで来てしまったの…私は霞…あなたはどなたですか?」
月姫
「名乗るほどの名は持たぬ…ここは怖ろしいモノノケの棲み家なれば
早々に立ち去るがよかろう。お前の身の為じゃ。」
霞
「まあ怖ろしいお話…でも…何故だか…そのお声は懐かしい。
何かもっと、もっとあたいに話して下さいな。」
月姫
「これはあきれた童じゃ…さっさと立ち去らぬと
身の毛もよだつような顔をした人食い鬼がお前を喰らいに出でようぞ!」
霞
「…鬼に喰われるのはきっと痛いのでしょうね…でもお怒りになるあなたのお顔が
あたいには何だか…とても…」
月姫がさっと袖を振るとつむじ風が霞を巻いて…
霞
「あれあれ、あたいの足が勝手に動く…嫌だ、もっと話したい…
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