私は覚えてる (40分)

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     舞台上を出演者全員がうろうろ歩いている。

     お互いを見付けて駆け寄る男女。

男1  絶対忘れない!
女1  私も!
案内人 …みたいな恋のお話は今回やりません。そういうのが観たい方はお手元のアン
    ケートに「次回公演は恋愛ものを希望!」と書いて、お名前ご住所の記載をお
    願いします。次回公演のお知らせをお届けします。ちょっと脱線しました。仕
    切り直します。

     駆け寄る男女。

男1  絶対忘れない!
女1  私も!
案内人 とか言っていても、忘れる時は忘れます。人間の脳は筋肉に似ています。使え
    ば使うほどに発達し、使わずにいれば衰えていきます。記憶に大きく関係して
    くるのがシナプス。繰り返し思い出したりする事でこのシナプスの結び付きは
    強くなり、また逆に途中で何か支障が出ると思い出せなくなってしまいます。
    年齢を重ねるとある一定の時期を境に、肉体が衰えていきます。老化と呼ばれ
    る現象です。それは脳も同じ事。健忘症、いわゆる物忘れが発生するのも自然
    な事なのです。いつかあなたは今日ここにいた事を忘れるかもしれない。でも
    それさえも自然な事。忘れたからといってその出来事自体が無くなってしまう
    訳ではありません。今あなたは確かにここにいます。これから何年何十年時間
    が過ぎても、ここにいたというのは事実です。もし忘れたとしても、いつか何
    かの切っ掛けでふとまた思い出してもらえる時があれば嬉しく思います。

全員  『私は覚えてる』
尚子  私は覚えてる。

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     須田家。
     忠治がテーブルでの折鶴をしている。
     
     美晴が帰宅。

美晴  ただいまー。
忠治  お帰り。
美晴  ねー、おじいちゃん。
忠治  ん?
美晴  ほらぁ。
忠治  んんん?
美晴  じゃあ、歌うから当ててね。(ハッピーバースデーを鼻歌)ね?
忠治  ん?
美晴  誕生日!
忠治  誕生日…。あぁ、そうか。誕生日か。ごめん。すっかり忘れてた。しまったな
    ぁ。何も用意してないよ。お小遣いあげるから、好きなものを買いなさい。
美晴  本当に? やった! じゃあお母さんには秘密にしてね。
忠治  なんで?
美晴  なんでも!
忠治  じゃあ、内緒だ。
美晴  うん! ありがとう。
忠治  (折鶴)一緒にやるかい?
美晴  うん。

     久子が尚子を連れて帰宅。

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