茨の城の黒の魔女
【 オープニング 】

 霧が立ち込める荒廃した城。散乱する屍たち。
 王の亡骸の傍に、背を向けた黒の魔女がいる。
 松明を持ち、茨を剣で斬りながら城を徘徊する王子。
 王の亡骸と、その傍の黒の魔女に気付く。

フランツ「そこにいるのは…、黒の魔女?」

 黒の魔女は、背を向けたままゆっくりと立ち上がり、こくんと頷く。

フランツ「僕はフランツ・ド・リュミエール。呪いを解くため、お前を倒しにやって来た。覚悟しろ!」



【 一 】

フェミ「白の魔女、フェミ。今日も元気に頑張ります。私の胸は今、愛でいっぱい溢れているの。
もうきゅんきゅんって感じ。この愛をみんなに御裾分けするわ。
陽が昇ったら人々が豊かになりますように、月が出たら人々が安らぎますように、毎日毎日祈っています。
さぁ、今日もみんなが幸せになりますように。(杖を振る)」

 フェミの家。

フェミ「ただいまー!」

シャルロ「おかえり」

フェミ「シャルロ!来てくれたのね。わあ、嬉しい。ちょっと待って、今お茶を淹れるから。
昨日も来てくれたのに、お城を抜け出すの苦労しなかった?」

シャルロ「まあね。でも、僕はまだまだやんちゃ盛りだと城の者も大目に見てくれているんだ。
それにここは街から離れているし、見つかることもない」

フェミ「王子様は大変ね」

シャルロ「君に会うためだったら、どんな障害も乗り越えてみせるよ」

フェミ「シャルロ…」

シャルロ「ところで、今日はどんな仕事だったの?」

フェミ「今年はなかなかカボチャが育たないと言うから、よく育つように魔法をかけてきたの。
豊作になったわ。報酬の他にカボチャも頂いたのよ」

シャルロ「フェミは凄いなあ。城にも献上品が届くだろう。今夜はカボチャスープが出るかな。うーん、楽しみだ」

フェミ「明日は仕立て屋さんへ行って、オーロラと星屑の布を作るの。娘さんの結婚式のドレスにするんですって。素敵よね」

シャルロ「フェミの花嫁衣裳も、オーロラと星屑の布がいいかい?」

フェミ「…ねえ、それって、どういう意味?」

シャルロ「君を城へ迎えたいんだ。天真爛漫で自由な君に、宮廷での暮らしは窮屈かもしれないけれど…。
(跪いて)フェミ、僕と結婚してくれないか?」

フェミ「はい!シャルロ(抱きつく)」

シャルロ「一緒に城で暮らそう。二人でいつまでも、幸せに暮らすんだ」

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