設定殺し
「設定殺し」

 演劇やらの作り話にはときどき「実在しない存在」が登場する。
 そんな「設定」は「設定」でしかなく、「そんなやついるか!」という話である。
 



  コスプレ祭り。出番は一瞬だが、衣装はみんな凝っている。

  明転。

  舞台上には大きな鎌を持った死神が立っている。
  怪しい雰囲気を醸し出している。

死神「私は死神。人間の寿命を決め、命を奪うもの。
   私の仕事は死期の近づいた人間に寿命を告げ、
   人生の最期を美しく演出し、死した人間の魂を頂くこと。
   私は人間の死に様が好きだ。
   人間は死せる時が最も美しく輝くのだ。
   この街では多くの命を刈ることができた。
   さて、次は貴様の街に現れ、貴様の魂を、命を頂くとしよう」

  天使が現れて、死神を殴り飛ばす。

天使「そんなやついるかーっ」
死神「へぶしっ」

  死神、退場。

天使「私は天使。世の中のみんなを幸せにするために下界に降り立ちました。
   人々の幸せ、それを祈るのが私の使命。
   さあみなさん、一緒に幸せになりましょう」

  悪魔が現れて、天使を殴り飛ばす。

悪魔「そんなやついるかーっ」
天使「へぶしっ」

  天使、退場。

悪魔「ふはははは・・・俺様は、悪魔だ!
   決して死神とキャラがかぶってなどいないさ!
   俺様は、貴様等を恐怖のどん底に──」

  宇宙人が現れて、悪魔を殴り飛ばす。

宇宙人「ソンナヤツイルカーっ!」
悪魔「へぶしっ」

  悪魔、退場。

宇宙人「我々ハ、宇宙人ダ──」

  サンタクロースが現れて、宇宙人を殴り飛ばす。

サンタ「そんなやついるかーっ」
宇宙人「へぶしっ」
サンタ「我々て・・・一人じゃねえか!」

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