バスストップ
登場人物
男(60)
少年(12)
妻
警官(コナリー)
探偵
1.片田舎のバス停手前の坂道
片田舎のバス停。アスファルトで舗装だけ施された田舎道。
道路の片方は崖、もう片方は田園風景が広がっている。
バス停にあるのは、標識とペンキのはげかけたベンチだけ。
高さ五メートルほどの街路樹が、優しく日差しをさえぎってくれている。
バス停手前の坂道を男が一人歩いている。
半袖のYシャツにスラックス。
五十代ほどのがっしりした男で、左手には革鞄をぶら下げて、汗を拭いている。
男「ふう……」
一旦立ち止まって小休止。だが、男はすぐに歩みを再開する。
SE 足音(じゃりを踏むような感じ)
2.片田舎のバス停
男「ここか……」
バス停にたどり着く男。
うなだれて少し荒い息を吐く。
呼吸を整えて周りを見る男。男の周囲には本当に何もない。
道路脇でサッカーのリフティングに興じる少年がいる以外は果てしなく伸びる道があるばかり。
鞄に目をやる男。革鞄にはナイフが忍ばされている。
SE ボールをリフティングする音。
男(M)「わたしが笑顔を失った日から二十年。長かったような気もするが、あっという間に過ぎていった気もする。今日、鞄に忍ばせたナイフでわたしは人を殺すのだ」
男のもとに、ボールが転がって来る。
男がボールが来た方を向くと、十歳そこそこの少年が手を振っている。
SE ボールが弾む音
少年「すみませーん、ボールとってくださーい!」
男「……」
男、ボールを拾い上げると少年に投げ返す。
少年「ありがとう、おじさん」
無言で道路を見つめる男。
道路の交通量は少ないが、それでも、車はよく行き交っている。
SE 車の往来の音
男「坊主、危ないぞ。サッカーをするなら、車に気をつけてやれ」
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