衝動についての考察


衝動についての考察



登場人物:男1
     男2

     女1


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 男がふたり、話している。
 猥談をしているようだ。
 とはいえ、男2が自分の欲望や妄想について語っているだけで、男1はただ聞いているだけである。
 男1は不快そうに顔を歪め、口を開く。

男1「ねえ、男っていっつもそういうこと考えてるの?」
男2「うん、まあ」
男1「・・・これだから男は」
男2「お前だって男だろうに」
男1「そうだな。確かにそうだ。でもな、世界中の男がみんなお前とおんなじだと思ったら、大間違いだぜ?」
男2「多かれ少なかれ、誰だってあるんじゃないのか? まあ、そういう欲望がさ」
男1「だったらさ、お前の欲望について、もっと聞かせてくれよ」
男2「は?」
男1「知りたいんだよ。男がいっつも何を考えているのかを、さ」
男2「はあ」

 男2、自分の欲望と妄想について話す。
 自分がどんな衝動を抱えているのか。
 毎日毎日どんなことを考えているのか。
 女をどんなふうに見ているのか。
 そういった、ゲスな話を、である。

男1「全くお前は、どうしてそういうことを平気な顔をして言えるんだ。そういう性癖といったものはな、人には言わずに隠しておくものなんじゃないの?」
男2「おいおい、お前が言わせたんだろ?」
男1「まったく、男ってほんとに毎日毎日そんなこと考えてるのかよ。
   こりゃあ性犯罪がなくならないわけだな。女性が不憫でならない」
男2「不憫ってなあ・・・。別にさ、妄想するくらいはいいだろ? 別に犯罪行為をするってわけじゃあないんだしさ。三大欲求の一つだぜ? 当たり前の感情だよ」
男1「物欲だな、まるで」
男2「は? 物欲?」
男1「女はモノじゃあないんだぜ? お前たちの持つその欲求は、繁殖のそれを逸脱してる。ただただ、モノ扱い。愛情のないそんなものはさ、物欲に他ならないんじゃないのか?」
男2「なんだよそれ・・・。まあ、男は性欲と愛情は切り離せるって言うしな」
男1「・・・そうか。とはいえ、お前も女が綺麗だなんて夢想するんじゃないぞ?」
男2「なんだよそれ。別にそんな勝手な理想とか抱いてねえよ」
男1「そうか。ならいいんだ。男だろうと女だろうと、同権でこそあれ同質じゃあないからな。平等なんてありえない。
   とはいえ、女は簡単に襲われたりするだろ? これは不平等に他ならないんじゃあないのか?」
男2「・・・・・・」
男1「お前も、どんなに欲情したからといって女を襲ったりするなよ。男にとってはただのスポーツに過ぎないんだろうが、女にとってはただの略奪に他ならないんだぜ?」
男2「お前は、まるで自分が女を知っているように話すな」
男1「まさか。
  でもな、オレは思うんだ。どんな聖人であろうと偉人であろうと、腹が減ったら飯を食いたいと思うし、女を抱きたいって思う。
  人間なんだから、当たり前なんだけどさ、でもオレは、人間のそういう当たり前の人間らしさって奴をオレは本当に嫌なんだ。
  人間ってのはさ、美しさと醜悪さを同時に併せ持つモノなんだろうけどさ、オレにはそれが苦痛でたまらないんだ。
  オレは自分が人間であるのも嫌だし、きっとお前が人間であることも嫌なんだよ。
  でもまあ、オレは男というものが欠けてしまってるんだよ、きっと」

男2(俺は思う。岩瀬という男はなんて女性的なのだろうと。
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