時絆
『時絆』〜トキキズナ〜
CAST
渡
真理
真
由美
るり
吹く風を心の友と
口笛に心まぎらはし
私がげんげ田を歩いてゐた十五の春は
煙のやうに、野羊のやうに、パルプのやうに、
とんで行って、もう今頃は、
どこか遠い別の世界で花咲いてゐるであらうか
耳を澄ますと
げんげ色のやうにはぢらひながら遠くに聞こえる
あれは、十五の春の遠い音信なのだらうか
滲むやうに、日が暮れても空のどこかに
あの日の昼のままに
あの時が、あの時の物音が経過しつつあるやうに思はれる
それが何処か?―――とにかく僕に其処へゆけたらなあ……
心一杯に懺悔して、
恕されたといふ気持ちの中に、再び生きて、
僕は努力家にならうと思ふんだ―――
中原 中也
プロローグ
幕が上がると
一人の男が歩いている。渡。
渡 「そろそろ花見の計画もたてないとなぁ。後で、真に電話しないと」
その後ろから、一人の少女が駆け寄ってくる。
渡の側まで来て、不意に立ち止まる。
少女「渡さん」
渡 「はい…」
少女は激しく動揺し、涙ぐんでいる。
少女「ごめんなさい」
渡 「えっ」
少女「こうなるなんてわかんなかったから」
渡 「何、何が」
と、少女は一度振り返り、
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