ガラスの靴はないけれど
「ガラスの靴はないけれど」
作 たかはし 凍湖
***登場人物***
人魚姫 ・・・言わずと知れた人魚姫
シンデレラ・・・言わずと知れたシンデレラ
葉月・・・入院している子供(女)
飯田・・・中年の看護師(女)
桃子・・・元レディースの入院患者
おばば・・・海の魔法使い
王子・・・・・シンデレラの王子
ばあや・・・王子のばあや
警官A
警官B
*********************
暗い舞台に人魚姫立っている。
人魚姫 「12月24日、午後8時40分。
東京湾はクリスマスを祝う船で賑わっていた。
私が乗った船では・・・彼の婚約を祝うパーティが開かれていた。
彼、そう、私が愛した男は他の女を選んだのだ。
もう私に残された道は海の泡になって消えるだけ。
それでもしょうがない。
それが始めからの約束だから。
甲板に手をかけた私の耳に、どこかから不気味な音が聞こえてきた。
隣の屋形舟から酔った親父が海に向かって吐いていたのだ。
ゲロゲロと。
そのとき、何もかもが馬鹿らしくなった。
折角人間にまでなったのに。
2本の足をもらったのに。
どうして私はこんな汚い海に沈まなくてはいけないんだ。
どうして彼は私を選ばなかった。
第一あの女のどこがいいんだ。
ただおっぱいが大きいだけの女じゃないか。
そして私は・・・飛び込むのをやめた」
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