六人目の亡霊
暗転中
女A そのとき私を突き落としたのは……お前だー!
男Bの叫び声。明転
女A じゃあ次はあんたの番ね
男A おう! むかーしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯しに行きました。おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ――
女A(男Aを突き飛ばしながら)どんぶらこー!
男B、突き飛ばされた男Aを見て叫ぶ
男A なにすんだよ!
女A なにすんだよじゃないわよ! 黙って聞いてりゃ結局『桃太郎』じゃないの!
男A でもこわいだろ! 赤ちゃんが入れるほど大きな桃が流れてきたら!
女B まぁまぁまぁ。まだ続きがあるんだよね?
男A あぁ、それなのに最後まで話を聞かないんなんてさー
女A ……悪かったわよ。んで、続きは?
男A 本当の鬼は、人の心の中に棲んでいるのかもしれ――
女A、男Aを叩く
女A 次
男B 容赦ないなぁ……
女B 今度は私の番ね。私のはとびっきりこわいよ~。題名は恐怖のみそし――
女A るー!
女B な、なに急に?
女A あんたもこいつと同じなのか?! 恐怖の味噌汁なんて古典的な怪談話じゃない!
女B 違いますー! 私のお母さんがお味噌汁の具に餃子を入れるんだよ!
男A 餃子を入れた味噌汁は美味いだろ!
女A それは、もう、人それぞれだからなにも言えないけど!
男B はい!(と、手を挙げる)
女A はい!(と、指を指す)
男B こわくて漏れそうなんでトイレに行ってきてもよろしいでしょうか!
女A 早く行ってこい! そんで一生帰ってくんな!
男B 行ってきまーす!
男B、下手に掃ける
女A 次! ……は、あいつだから、飛ばしてあなたね
女C はい。これは、廃校の一室で、軽い気持ちで怪談話をする男女五人の物語。そう、まるで今の私達みたいに。その廃校には数々の不気味な噂があります。人を食べる怪物が蠢いていたり、命を狩る悪魔が潜んでいたり、亡霊があの世に引きずり込んだり……あ
女C、なにもないところをジッと見つめる
全員、無言になる
女A な、なによ! たかが作り話じゃない! みんな本気で怖がっちゃってさ! 私なんかつまらなくてあくびが出ちゃったわよ。ふぁーあ。ふぁーあ!
男B(の叫び声)
全員、叫ぶ。女A、気絶する
男B、下手から登場
男A ど、どうしたんだよ?!
男B う、ううう、うう動いたー!
女B な、なにが動いたの……?
女C 人を食べる怪物、とか
男A まさか、そんなことありえないだろ……
女C ありえないことがありえるのが、怪談なんじゃないですか?
女B、お腹を押さえ苦しむ
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