二脚の椅子
さまざまな椅子の物語
二脚の椅子

登場人物

 男
 女
 精霊

この脚本は少人数でも公演できるように工夫した。

    2010年12月15日 改定 誤字・改行の誤りを訂正
    2010年12月17日 改定 結末の矛盾を解消


○開演あいさつ

  緞帳は開いている。舞台はかなり暗い。内幕が半ばしまっており、舞台は狭い。
  舞台中央に椅子(簡素なものがいい)が二脚置かれている。椅子は並んで(客席に正対して)置かれている。

  舞台上手から精霊が登場する。スポットが当たる。

精霊(劇場係員の姿) 「みなさん、ようこそお越しくださいました。今日はどこにでもある二脚の椅子をめぐるお話をさせていただきます。ほら、(というと舞台中央の椅子にサスがあたる)ご覧ください。これが今日の主人公たちです。このどこにでもあるありふれた椅子が。(薄ら笑いを浮かべて)もちろん、椅子はなにも話しません。絶対に動きません。(真顔になって)でも話せないからこそ、動けないからこそ、多くを語るということもあるのですよ。では、始めましょうか」
 

○劇場・座席

  舞台全体が明るくなる。人々のざわめきの声(SE)。
  舞台上手から男が登場。下手側の椅子に座る。
  遅れて女が下手から登場。チケットを見て座席の位置を探している。すみませんといって男の前を窮屈そうに通ろうとする。

女 「すみません。前を通ります。ごめんなさい」
男 (足を踏まれて)「痛っ」
女 「あ、ごめんなさい」(何度も謝ろうとする)
男 「いや大丈夫です。この座席、ちょっと狭いですね」
女 「本当にごめんなさい」
精霊(場内アナウンス) 「大変長らくお待たせしました。ただ今より開演します」

  照明フェイドアウト。
  拍手のSE、照明フェイドイン。

精霊(場内アナウンス) 「第一幕は終わりました。ただ今より休憩に入ります」
女 (プログラムを開く。男の視線を感じて)「あの、よかったらご覧になりますか」
男 (あわてて)「いや、いいんです。ごめんなさい」
女 「いえ、どうぞ(といってプログラムを見せながら)。あの主人公の役の人、とても素敵でしたね。なんか演技が真に迫っていたというか」
男 「彼は役者になるまでとても苦労した人みたいです。だから演技にもその経験が生かされているんでしょう」
女 「ずいぶんお詳しいんですね」
男 「いや、たまたま読んだ雑誌に彼のエッセイが載っていたのを読んだんですよ」
女 「(感心してうなずいた後)観劇はよくなさるんですか」
男 「そうですね。月に一回くらいは・・・」
女 「まあ、じゃあこれまでもいろいろなお芝居をご覧になっていらしゃるんでしょう」
男 「まあ、それなりに。あなたも、お好きなんですか」
女 「ええ、でも私は毎月ではありません」
男 「僕の場合、ほかに趣味がないもので」
女 「わたしもそうですわ」
男 「なにか、気が合いますね」
女 「そうですね」
男 「そろそろ第二幕がはじまりますね」
女 「はい」

  開演を告げるブザーの音。照明フェイドアウト。上手に精霊が登場。サスがあたる。
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